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なぜお茶は渋いのか?渋味の原因と仕組みを紐解く
- [2025.01.14] Written By 北城 彰(Akira Hojo)
お茶には渋味を全く感じないものもあれば、非常に強い渋味を持つものもあります。では、この渋味の原因は何なのでしょうか?ここでは、渋味の原因とそのメカニズムについて解説します。
渋味の原因
渋味は、お茶の成分が口腔内のタンパク質と結合することで生じる収斂感に由来します。舌や粘膜などはタンパク質を含んでおり、そこにお茶由来の成分が結合することで、渋味として感じられるのです。
渋味の原因物質には大きく分けて2つあり、1つはお茶に含まれるタンニン類、もう1つは金属イオンです。どちらも口腔内のタンパク質と結合することで渋味を引き起こします。渋味と一口に言っても、お茶ごとに渋味の感じ方が異なるのは、さまざまな成分が関与しているためです。
タンニンはタンパク質と結合する性質を持つポリフェノールの総称
お茶やワインの渋味成分について尋ねられると、多くの人が「タンニン」と答えます。
しかしながら、タンニンとはどういう物質か、その定義を明確に理解している人は非常に少ないと思います。
一般的に、タンニンと聞くと「茶色い」というイメージを持つ人が多いかもしれません。しかし、白ワインや緑茶は茶色くありません。それでは、お茶に含まれるカテキンなどのポリフェノールはタンニンに該当するのでしょうか?また、白ワインに含まれるポリフェノールもタンニンと同義と考えられるのでしょうか?
タンニンという言葉は、特定の物質を指しているように思われがちですが、実際にはそうではありません。
タンニンはポリフェノール全般を指す言葉ではなく、タンパク質と結合する性質を持つ特定のポリフェノールを総称したものです。そのため、タンパク質と結合することで渋味(収斂感)を引き起こす化合物であっても、それがポリフェノールでない場合はタンニンとは呼びません。また、ポリフェノールであっても、タンパク質と結合する性質を持たないカテキンのような物質はタンニンではありません。
タンニンには、①茶葉由来のカテキンガレート系のものと、②製茶過程で生成されるテアルビジンなどが含まれ、それぞれ異なるプロセスや条件で形成されます。カテキンガレート系は主に茶葉そのものに起因し、テアルビジンは発酵や酸化による生成物です。
茶葉由来のタンニン
お茶の場合、春に摘まれた茶葉には、タンパク質と結合する性質のポリフェノールが少ないとされています。そのため、春の一番茶は渋味が弱く、言い換えれば、タンニンの含有量も少ないのが特徴です。
お茶の主成分の1つであるカテキンはタンパク質とほとんど結合しません。ゆえに、カテキンはタンニンではありません。一方、エピカテキンガレートやエピガロカテキンガレートは、ガレート基(没食子酸)を持つことでタンパク質と強く結合します。そのため、カテキンガレートはタンニンとされ、これを多く含むお茶は渋味が強くなります。
エピカテキンガレート(ECG)やエピガロカテキンガレート(EGCG)は春茶には少量しか含まれないのに対して、夏摘みのお茶には1.5~2倍多く含まれています。それゆえに、夏茶や番茶は渋味が強く感じられます。
発酵茶の製茶不良から生じるタンニン
白茶、紅茶、烏龍茶といった発酵茶を生産する際、発酵を適切なタイミングで止められない場合、酸化酵素であるポリフェノールオキシダーゼが活性を保ったまま残り、酸化発酵が続きます。その結果、茶葉に含まれるカテキンなどのポリフェノールが過剰に酸化・重合し、テアルビジンと呼ばれる複雑な高分子ポリフェノールが生成されます。この状態は一般に「過発酵」と呼ばれます。簡単に言えば、酵素の制御が失敗し、酸化反応が暴走した結果であり、渋味を呈します。テアルビジンはポリフェノールでありながらタンパク質と結合する性質を持つため、タンニンとして定義されます。
一方、適切に作られた紅茶には、酸化発酵過程で生成されるテアフラビンが含まれます。テアフラビンは黄色の色素であり、紅茶の鮮やかな色合いと風味のバランスをもたらします。多くの書籍やネット情報ではテアフラビンをタンニンとして扱う例がありますが、テアフラビンはタンパク質と結合する性質を持たないため、厳密にはタンニンではありません。
金属イオンにより生じる渋味
お茶の渋味はタンニン以外にも、金属イオンも渋味(収斂感)に寄与することが知られています。アルミニウムやマグネシウムなどの金属イオンは、口腔内のタンパク質と結合し、収斂感を生じさせます。しかし、これらはポリフェノールではないため、タンニンとは呼びません。
特に、酸化したお茶、例えば酸化した抹茶や玉露では、強い渋味が感じられることがあります。これは、葉緑素(クロロフィル)が酸化分解される際、クロロフィルの中心にあるマグネシウムイオンが遊離し、そのマグネシウムイオンが口腔内のタンパク質と結合して収斂感を引き起こすためです。抹茶や玉露は被覆栽培によってクロロフィルを多く含むため、酸化が進むと他のお茶よりも多くのマグネシウムイオンが遊離し、より強い渋味が生じる特徴があります。詳しくは以下のコラムをご覧ください。
https://hojotea.com/jp/posts-1177/
また、缶ビールや缶入り飲料を飲むと渋味を感じることがありますが、これは缶から溶出したアルミニウムイオンが口腔内のタンパク質と結合し、収斂感を引き起こすことが原因です。同様に、急須やヤカンの素材に、特定の金属(銅、アルミ、亜鉛、マグネシウム、マンガン)が含まれている場合、お茶は渋くなります。陶器の急須でお茶を淹れると円やかになるというのは、必ずしも正しくなく、陶器に含まれる金属の種類が重要です。
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