急須選びで最も重要な点は、自分の飲むお茶に合っているかどうかと言う点です。
例えば、萬古焼と常滑焼、備前焼ではお茶の味はそれぞれ異なります。

急須がお茶の味に与える変化は幾つかの要素に影響されます。

 

1)還元焼成・酸化焼成
急須の焼き方には酸化焼成と還元焼成があります。つまり、空気を送り込んで完全燃焼させて焼いた焼き物と空気を殆ど与えず不完全燃焼で焼き上げた焼き物があります。陶器はミネラルで構成されており、酸化焼成されるとミネラルは酸化し、ぎゃくに還元焼成では還元されます。鉄の場合、酸化すると酸化第二鉄Fe3+となり、還元されると酸化第一鉄Fe2+になります。

同じ種類の土で評価した場合、還元焼成と酸化焼成ではお茶の味や香りの感じ方は異なります。これまで佐渡島の朱泥、常滑の朱泥をもちいて酸化したものと、還元したものを比較してきました。変化の程度の強弱はあるものの、どの土も酸化焼成と還元焼成間では同じ傾向の変化が観察されました。

酸化焼成は香りが立ちやすいのが特徴です。香りが口の中に広がりやすく、烏龍茶や紅茶に向いております。

還元焼成の場合、酸化焼成と比べると香りが立ちません。ただその代わりに、より深いコク(喉越し)が感じられます。プーアル熟茶や緑茶に向いております。また、香りよりもコク(喉越し)を重視する人は烏龍茶などもこの土でいれたりします。

上記2つの傾向は、あくまで同じ土を使っての比較をした場合の結果です。
2)土に含まれるミネラルの量と表面構造
一般に土に含まれるミネラル分が多ければ多いほど水への影響力は増すと仮定されます。だからといって鉄100%の急須でいれたらお茶の味がよりまろやかになるわけではありません。含まれるミネラル量も大事ですが、土の表面構造も重要です。より、多孔質で表面積が大きいほど、水の味は変化します。また、土の粒子が細かいほど水への影響力は強くなります。実際、同じ種類の土を異なる温度で焼くと、温度が低いほど味はより水の味が変化します。高い温度で焼くほど味の変化の度合いは少なくなります。高い温度で焼くと言うことは、より多くの粒子が溶けてガラス化しているわけで、温度の上昇に伴い表面積は小さくなります。

 

3)土に含まれるミネラルの種類

土に含まれるミネラルの種類は水の味を異なる方向へと変化させます。例えば、鉄分は味をまろやかにします。それに対し、銅・亜鉛・アルミなどの金属は水の味を渋く、フラットに変化します。粒子が細かくて、低い温度で焼かれた茶器でも、ミネラルの種類が適してない場合お茶の味はまろやかになりません。

 

 

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