静岡の川根で在来種の煎茶を仕入れました。

[2010.05.24] Written By

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静岡へお茶の視察に行ってきました。
私は「山のお茶」を選んで買っているため、シーズンが到来するのは一般的な茶園よりも遅くなります。
新茶のシーズンと言えば、一般的には4月の中旬からスタートします。
但し、春は標高の低い場所から始まり、徐々に標高の高い場所へと移動していきます。
標高の高い茶園ほど、茶摘み時期が遅くなります。
逆に言うと、高い標高に位置する茶園ほど冬の時期が長いことを意味しております。
長い冬の間、お茶は寝ているわけではなく、根はミネラルなどの養分を吸収しているため、冬が長い地域のお茶は味が濃厚になります。
今回訪問した茶園は、川根の山間部500-600mの標高に位置する茶園です。
何故この茶園を選んだかというと、「在来種」と呼ばれるとても珍しい品種のお茶があると聞いたからです。
在来種とは、昔から日本にある品種という意味で、人によっては、日本の山に古来からあった野生種という説明をする場合もあります。
但し、お茶は元来、亜熱帯地域の植物であるため、日本における在来種とは、日本にお茶が伝来した当時の品種と定義できます。
つまり、「渡来種」と言った方が適切なのかもしれません。静岡のお茶は栄西という僧により伝えられたと言われており、在来種はまさに栄西が中国から持参したお茶に限りなく近い品種と考えられます。
在来種の特徴として、
1.根が非常に深く長く伸びること
2.茶葉の形状が烏龍種にやや近い
3.今では、静岡でも殆ど見られない (茶園の脇などにはぱらぱらとあるのですが、茶園として残っている地域は静岡には殆どありません。)
4.アミノ酸独特のまったり感はないが、スッキリした味わいで、喉越しが強い
静岡の場合、多くの茶園が藪北種と呼ばれるお茶を栽培しております。旨味が強く、火入れをしたときに香りが出やすい事から、多く普及しております。
それに対し、在来種は殆ど植え替えられ、今では殆ど残っておりません。唯一、山間部の急斜面に位置する茶園などで一部在来種が残っているのが現状です。
在来種の場合、根が非常に長く強いため、重機を入れないと植え替えが出来ず、それ故に山間部では残っているようです。
根が深いことで、在来種の茶葉にはミネラルが多く含まれ、藪北種のお茶と比較するととても味と香りの余韻・喉越しが強く感じられます。
更に、烏龍種に近いこともあり、香りがとても変わっております。
香り的には蘭の花に近い香りで、喉に残る香りの質としては、台湾の烏龍茶に近い感じです。
在来種ならどれでも良いというわけではなく、出来るだけ樹齢の古い茶園を選びました。古い木ほど、根の表面積が大きく、喉越しの強度が強いためです。
茶園で芽をかみ、唾を飲み込むことで、原料茶葉の喉越し強度を測定することが出来ます。
今回は生産を行っている渦中に茶園と工場を訪問することで、自分の希望する茶園の茶葉だけを抜き出すことに成功しました。在来種は通常他の品種と混ぜられるため、在来種として市場に出ることはありません。
但し、生産農家では、自家用に毎年飲むお茶に関しては、必ず在来種から作られたお茶を混ぜる前に取り出しているそうです。それだけ、在来種の茶葉は美味しいと言うことです。
こうして、無事目的の川根在来種の買ことが出来ました。
他にはない、極めて珍しいお茶を入手できたため大変満足しております。来月から販売予定です。
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静岡在来種の茶葉:非常にキリッとした形状で、茶摘みをした後の茶園は蘭の花の香りがしておりました。

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在来種の生産風景
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左が在来種、右は藪北種です。在来種の茶葉は藪北種よりも明るい黄緑色をしているのですが、加工をするとまるで玉露のように濃い緑色になります。これは茶葉に含まれる成分が濃いからではないかと思います。

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