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雲南省南西部のプーアル茶有名産地、昔帰
- [2016.05.06] Written By 北城 彰(Akira Hojo)
雲南省におけるプーアル茶の産地で一番有名なのは雲南省南部に位置する老班章ではないかと思います。実は南西部の臨滄にも「昔帰」という極めて有名な産地があります。昔帰のお茶は海外では意外と知られておりませんが、老班章に近い高額の値段で売られており、両産地は有名プーアル茶のキングとクイーンとも言うべき位置づけにあります。
有名プーアル茶産地に共通するふくよかな味わい
有名プーアル茶に共通するのは、非常に強いボディです。お茶を口にいれると、香り・味が口いっぱいに広がり、お茶が非常にふくよかで豊かに感じられます。ただし、私にとって、お茶の原料品質を評価する重要な指標は余韻の深さです。中国では老木から作られたプーアル茶がブームですが、お茶の木の樹齢が増すことで強くなるのも余韻です。ただし、世の中全ての人が余韻の深さを感じられるわけではなく、意外に多くの人が余韻の強弱を感じる事が出来ません。反面、ボディは余韻よりも分かりやすく、比較的多くの人が感じる事が出来ます。例えば、貝の味噌汁を飲んだときのふわっとした味わいがボディに相当します。この事から、ボディの強いお茶は、より多くの人に好まれる傾向があり、それが人気度に相関します。有名なお茶の多くが強いボディを有しているのはこのような理由からです。私はお茶を仕入れる際、一般に「余韻=質」、「ボディ=人気度」と定義しております。
メコン川流域位置する昔帰
昔帰は雲南省臨滄市臨翔区にあり、メコン川(中国では瀾滄江)流域に発達しているお茶の産地です。産地の真下をメコン川が流れており、メコン川の土手が茶園になっていると言っても過言ではありません。メコン川からもたらされる土壌はカルシウムをはじめとするアルカリ性のミネラルが豊富に含まれており、それがお茶のふくよかな味わいを生み出しております。
軽く殺青を行うことで生じる烏龍茶風の香り
近年、道が整備され、昔帰へは観光客でも比較的容易に行けるようになりました。天気にもよりますが臨滄の市内から車で4-5時間で着くことが出来ます。この為、近年では観光客・ハイアマチュアによる訪問が増えました。観光客は味の評価法については詳しくないため、一般的に「良い香り」に良く反応します。この結果、昔帰のお茶は、殺青を非常に軽く行うことで、天日乾燥中に意図的に酵素発酵を促し、烏龍茶のような花の香りを高めたお茶が主流となりつつ有ります。ただし、この方法で作られたお茶は、経年熟成した際に香りの透明感に欠けます。
農業形態の変化
昔帰では過去10年にお茶の値段が急激に上昇したことから、農業形態に変化が起きつつあります。農家の収入は、生茶葉の販売に頼っており、キロ単価 x 収穫量が各農家の収入になります。近年では、より生産量を高めようとする農業努力が随所に見られ、茶園によっては肥料なども普及しつつあります。生産量は必ず品質と反比例することから、今後の品質動向が心配です。なお、HOJOでは昔帰のお茶は仕入れておりません。値段が異常に高いことが最大の理由ですが、加え、ボディの点では馬鞍山のお茶は同レベルのボディを有しており、余韻も非常に深い割に遙かに安価に仕入れられるため、敢えて、昔帰は仕入れておりません。
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