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プーアル生茶でジャスミン茶を作る試み
- [2013.09.07] Written By 北城 彰(Akira Hojo)
HOJOではプーアル生茶を使ってジャスミン茶を作る試みをしております。お客さんからのリクエストがきっかけなのですが、私もコンセプトがとても気に入り、昨年から生産に取り組んできました。
昨年は生産段階で失敗
実は昨年は生産に失敗しました。その理由ですが、昨年はプーアル生茶の毛茶をそのままの形状のまま着香しました。
着香工程とは、プーアル生茶にジャスミンの花を混ぜ、茶葉にしっかりと香りを吸わせ、翌日の朝に篩にかけることでジャスミンの花と茶葉を分離します。茶葉への着香は一回だけではなく、ジャスミンの花と混ぜる工程は5-6回繰り返されます。毎回、新鮮な花をもちいて何度も着香を行うことで、茶葉にしっかりと花の香りを浸透させます。昨年は毛茶の状態のプーアル茶をもちい、そこにジャスミンの花を混ぜ込むことでで着香を行ったのですが、翌日にジャスミンの花と分離ができないという問題が発生しました。通常、ジャスミン茶の生産では、緑茶をパール状に丸めます。緑茶は真珠大の球形をしているのに対し、着香後の花は花びらが開き、パール状の茶葉よりもサイズが大きいために、篩にかけることで容易に分離することができます。昨年の生産実験では、プーアル茶の茶葉を丸めなかったために、ジャスミンの花と分離ができないことが発覚しました。その時点で急遽パール状に丸めることも検討したのですが、ジャスミンの花のシーズンが終わりに近づいていたこともあり、計画は頓挫しました。
マニア好みのコクの強い原料を入手
そんなわけで、今年はプーアル茶をパール状に丸めることを前提として計画を立てました。まず、使用した原料ですが、臨滄の山岳地帯の少数民族による自然栽培茶を選びました。そもそも、プーアル茶をもちいてジャスミン茶を作る目的ですが、他の茶葉原料にはないレベルの深いコクとボディがあるジャスミン茶を作るためです。プーアル茶と言っても、プーアル生茶は茶色の色をしたお茶とは異なります。茶色の色をしたプーアル茶は、プーアル熟茶と呼ばれ、それに対し、私が今回もちいた原料はプーアル生茶です。生茶の茶葉は緑色をしており、お茶の性質的には白茶にとても近いお茶です。
その中でも、香りの自己主張があまり強くなく、深いコクのお茶を選びました。このお茶の産地では、お茶の木は雑草の中に紛れるように自生しております。今回の原料を選んだ土地の少数民族は、お茶の木を自然の植物と同じように扱っております。お茶の葉はバナナの皮のように黄色に変色し、まるで野生の木のように力強く自生しておりました。このような環境下では木の生長が非常に遅いため、お茶の木一本当たりの芽の数は自然と少なくなり、茶葉一枚一枚のミネラルが濃厚になる事から、極めて味が濃く、コクの強いお茶になります。
製造にさいしての不安点
プーアル茶としては非常に良い原料を選んだわけですが、私には不安もありました。プーアル茶の場合、茶葉自身の持つ香りがあるため、それがどの程度ジャスミンの香りと調和するか非常に不安を感じておりました。また、ジャスミンの花で着香をする際には、着香→乾燥→着香→乾燥と進めます。乾燥工程を間に何度もいれることで、茶葉の香りが変質し、ジャスミンの香りと合わなくなることも懸念されました。
今年は大成功
先日生産サンプルを受け取ったのですが、それを開封したとき、これまでの不安は完全に払拭されました。ジャスミンの香りが完全に勝っており、プーアル茶は担体としての機能を予想以上に良く果たしてくれました。茶葉の強いコクのお陰で、ジャスミンの香りには重量感があり、胸に吸い込まれるような濃厚な香りがしました。それにしても、このジャスミン茶のコクの深さは普通ではありません。「これほどまでにコクを深くする必要があったかな?」と思い返してしまうほど、コクの強いお茶になりました。味の濃い、深い喉越しのお茶が好きな人、舌の肥えた人に喜んでいただけるお茶ができたと思います。
ブラックパールな外観
パール状になったプーアル生茶は見た目は妙に黒く、お世辞にも美しいといえる外観ではありませんでした。見た目が黒いので、ジャスミンブラックパールとでも名前をつけようかとも思っているほどです。ただ、いったん湯を注ぐと、黄緑色の茶葉が現れ、プーアル生茶らしい外観となります。このお茶のもう一つの特徴は、何煎もいれ続けられることです。現在出荷の手続きを進めておりますので、今月中には紹介できそうです。
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