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ダージリンファーストフラッシュの茶葉が緑色をしている理由
- [2013.03.18] Written By 北城 彰(Akira Hojo)

ダージリンのファーストフラッシュは紅茶にもかかわらず茶葉が緑色をしております。ファーストフラッシュの茶葉が緑色をしている理由ですが、意外に多くの人が勘違いしているため、改めてその理由を説明したいと思います。
ダージリンで緑色をしているのはファーストフラッシュのみ
ダージリンティは春3-4月頃に摘まれるファーストフラッシュと、5-6月頃に摘まれる2ndフラッシュ、そして9-11月頃にかけて摘まれるオータムナルの3種類に分類されます。2ndフラッシュとオータムナルは茶葉がオレンジ〜茶色をしており、文字通り紅茶と呼ぶに相応しい外観をしております。それに対し、春3-4月に摘まれるファーストフラッシュの茶葉は緑色をしており、お茶の水色も緑茶や烏龍茶、白茶のような乳白色をしております。

ファーストフラッシュが緑色をしているのは意図的にそうしている為
この理由として、茶葉に含まれる成分の違いが原因という意見がありますが、それは正しくありません。中国でもほとんどの高級紅茶は春に摘まれた茶葉から作られますが、しっかり発酵されていることから、テアフラビンを豊富に含み、ゴールデンリングができるほどに深い色合いに仕上げられます。ダージリンのファーストフラッシュが緑色をしているのは、生産者が意図的にそうしているためです。ファーストフラッシュでもオータムナルのようにしっかりと発酵させて、オレンジ〜茶色の茶葉にすることが可能です。また、逆に、秋に摘まれたお茶でも製法のコントロールによりファーストフラッシュのように緑色の茶葉にすることが可能です。
ファーストフラッシュが緑の理由
ファーストフラッシュの製法は他のシーズンに作られるダージリンティの製法と異なる点があります。
萎凋で水分量を落とすことで、発酵がゆっくりに
まず、萎凋時間が非常に長いという点です。萎凋とは茶葉を静置、または、風をあてることで、茶葉をゆっくりとしなびさせる工程です。その目的は、第一に水分量を下げ、茶葉を揉みやすくするためです。ただし、水分量が下がれば下がるほど、茶葉に含まれる酵素は発酵しにくくなります。酵素が発酵を行なうには水分は欠くことができません。萎凋により水分が下がった場合、揉捻(茶葉を揉んだ)後の発酵があまり進みません。ちょうど、乾燥してしなびてしまったリンゴは切ってもあまり茶色くならないのと同じ原理です。
短めの発酵時間
ダージリンファーストフラッシュは揉捻のあとには発酵が行われます。発酵は部屋の中に茶葉を静置し、比較的短い時間で行われます。もし長めの発酵を行ったとしても長時間の萎凋により水分量が少ないために、あまり発酵は進みません。
低い温度
ダージリン1stフラッシュが緑色をしているもっとも重要な理由は、環境の温度が低い点です。春摘みのファーストフラッシュが摘まれる2月や3月のダージリンは極めて寒く、朝夕などは10℃以下にもなります。このような低温環境下では、発酵は進みにくく、茶葉を深く発酵するには発酵室の温度や湿度管理をする必要があります。温度や湿度を上げることで、深く発酵することはやろうと思えば出来ることですが、ダージリンでは、環境と市場の需要に合わせ、発酵を深く行わないことで緑の紅茶に仕上げているのです。
ダージリンファーストフラッシュの萎凋工程は烏龍茶で言う発酵
萎凋を行う最大の目的は脱水ストレスにより茶葉に含まれる酵素を活性化し、花のような香りを生成することです。烏龍茶の香りが作られるのも萎凋工程です。「ダージリンファーストフラッシュは烏龍茶」と言うエステートマネージャーもいるほどです。確かに、ダージリンファーストフラッシュは烏龍茶と同じ半発酵茶で、紅茶と言うには緑過ぎます。ただ、烏龍茶との違いは製造工程の順番です。
烏龍茶の加工の順番
萎凋(発酵) → 加熱(酵素失活) →揉捻(茶もみ)→ 乾燥
紅茶の加工の順番
萎凋 → 揉捻 → 発酵 → 加熱(酵素失活)→ 乾燥
萎凋の後、加熱して酵素の働きを止めてから揉まれる烏龍茶に対し、ダージリンファーストフラッシュの場合、萎凋の後に揉捻が行われ、更に、静置による発酵がおこなわれます。
台湾の烏龍茶などは緑の爽やかな香りがしますが、これは萎凋により目的とする香りが生じた時点で即、加熱し、酵素を失活させることで、その香りを維持管理しているためです。逆に、ダージリンファーストフラッシュの場合、萎凋の後に、茶葉は非加熱のまま揉まれ、更に、発酵工程が入ります。これにより、緑色はしているものの、発酵が更に進み、よりマイルドでダージリンファーストフラッシュらしい香りを形成します。
ダージリンファーストフラッシュの今後の進化形
ダージリンファーストフラッシュはしっかりと長時間萎凋を行った後に作られるため、萎凋の過程で茶葉が発酵を開始し、花のような香りが生じます。そこで烏龍茶のように、萎凋の後、そく茶葉を加熱して酵素を失活し、そのあと通常通りに揉捻を行った場合、烏龍茶と緑茶のハイブリット茶ができます。現在、ダージリンでは台湾の烏龍茶の生産技術が積極的に取り入れられているため、良い悪いは別として、今後、その様な製法のお茶も登場するかもしれません。
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