紅茶には様々な形状の茶葉有ることをご存じでしょうか?

例えば

1. ホールリーフのように摘んだままの形状

2. BOP(Broken Orange Peko)と呼ばれる葉を刻んだ形状

3. CTCと呼ばれる刻んだ葉を粒状に造粒した形状

茶葉が細かな理由として、ティバックで抽出し易いように、より細かな形状に加工されたという説明をよく目にします。

ただ、本当にそれだけが理由なのでしょうか?

生産の視点から、茶葉を小さくする非常に重要なメリットを説明したいと思います。

紅茶の歴史

世界で最初(1600年代)に作られた紅茶は中国福建省武夷山市桐木関の正山小種(ラプサンスーチョン)と言われております。当時正山小種は海外市場を中心に非常に人気を博しました。ただ、紅茶の人気拡大に伴い、需要過多となった結果、値段が高騰しました。

更に安価なお茶を求め、正山小種の生産技術を模倣する形で安徽省の祁門で紅茶が作られ始めました。こうして作られたのがキームン紅茶(祁門紅茶)です。

その後、中国紅茶の作り方を模倣することで、イギリス人の手によりダージリン紅茶が開発されました。

その後も拡大し続ける需要に応えるべく、生産地はアッサム、スリランカ、更には東南アジア、アフリカケニアなどへと広がりました。

また、1900年代になってから、雲南紅茶を始め、中国各地で紅茶が作られるようになりました。

1つ着目すべき点は、インド→スリランカ→アフリカと後に行くほど茶葉が細かく加工されるようになっている点です。

紅茶作りで最も大事な発酵止め工程

紅茶の生産は、萎凋→揉捻(揉むこと)→発酵→発酵止め→乾燥の順番で行われます。

この工程の中で最も難しく、重要な工程は「発酵止め」です。

私の経験上、日本国内外を問わず、多くの生産者は発酵止めと乾燥工程を混同している傾向があります。(70-80℃で乾燥すれば、酵素も失活するという思い違いです。)しかし、実際は、乾燥しただけでは、酵素は失活しません。

発酵止めをする代わりにただ乾燥した場合、茶葉内部の温度は徐々に上昇します。ゆっくりと温度が上昇した場合、細胞内部に存在する酵素は活性化し、その結果、過発酵と呼ばれる状態になります。いわゆる、濡れぞうきんや、蒸れ臭がする茶葉になります。

発酵止めとは100℃以上の熱を加えることで、茶葉に含まれる酵素を失活し、発酵を止める工程です。本来乾燥はその後に行います。

発酵止めをするに当たり、生産者にとって難しい点は、茶葉の水分は部位ごとに一定では無い点です。

特に萎凋をしっかりと行った茶葉に関しては、水分値に大きなバラツキがあります。例えば、茎は水分を多く含み、葉は水分が低めです。

酵素を止めるためには100℃以上の熱を加える必要がありますが、茎のような水分が高い部位は焦げにくい反面、水分の低い葉の部位は焦げやすいというジレンマに直面します。温度を設定するに当たり、茎に合わせて高く設定すると、葉は焦げるし、葉に合わせて低い温度にすると茎が加熱不足となり過発酵になります。まさに、「帯に短し、襷に長し」状態です。

中国や台湾では、摘んだままの形状にて紅茶を加工する為、発酵止めが難しく、紅茶の加工は熟練の職人の手作業で行われます。経験と勘に基づく非常にシビアな調節が行われます。

このような事情から、紅茶の生産は非常に難しく、発酵止めをする前に、茶葉を堆積して、水分を再分布したり、風量を強くすることで、温度を下げつつ全体の熱量を上げるなど、茶葉ごとに職人芸的な調節が必要になります。

実際、中国でも、発酵止めに失敗する事は日常茶飯事です。

余談ですが、紅茶品種と呼ばれる、アッサム系の茶葉から選抜された紅茶品種は、水分含有量が高く、焦げにくい特性を持つため、生産者は安心して高温で発酵止めが出来ると言う長所があります。

茶葉を細かく裁断することで水分を均一にできる

紅茶の形状は、中国→インド→スリランカ→アフリカと、時の流れに従って、より細かく変化しております。

前述したとおり、中国の紅茶はホールリーフ(摘んだままの形状)から作られます。

ダージリンは揉捻を強い圧力で行うことで、茶葉は捻じ切られ、元の茶葉の形状を完全には残しておりません。


スリランカになると揉捻された茶葉は、BOP:Broken Orange Pekoと呼ばれる形状の茶葉が主流で、ローターバンと呼ばれるスクリュー状の回転カッターで細かく切り刻まれます。


東南アジアにおける生産設備:ローターバン


アフリカはCTC:Crush, Tear and Curlと呼ばれる形状の茶葉が主流で、萎凋した茶葉の破砕、引き裂き、造粒を一連の装置で行うことで、小さなコロコロした形状の粒に仕上げます。

茶葉を細かく加工するメリットですが、細かくすることで、茶葉の水分が再分配される為、水分が均一になります。

茶葉の水分が均一になる事で、発酵止めが非常に管理しやすくなるのです。

また、茶葉が細かくなることで、表面積が大きくなり、加熱時に水蒸気が発生しやすくなります。水蒸気が発生により、強く加熱しても茶葉の温度は100℃以上にあがりません。このため、茶葉が焦げにくくなり、制御が容易になります。

このように茶葉が細かくなることで、中国のような職人芸が無くても、紅茶が生産できるようになるのです。

茶葉を細かくすることで生産のマニュアル化が可能に

紅茶の歴史は、職人技の中国で始まり、その後のイギリス人の手でアジアやアフリカ諸国へと拡大しました。

イギリス人にとって紅茶新興国で現地の人々を使って紅茶を作る為には、作業の機械化とマニュアル化が最重要課題だったと思われます。

最も制御が難しい発酵止め工程も、茶葉を細かくすれば、水分値が平均化し、蒸気が発生しやすくなることで、高温での処理が可能となり、作業が安定し、マニュアル化しやすくなります。

以上、生産の観点からすると、細かな形状の茶葉は新興国で「製茶作業を安定化させ、マニュアルに基づく作業を容易にするために開発された」と考えるのがごく自然ではないかと思います。

細かな茶葉はティーバックに向いているという説明もありますが、これはどちらかというと後付けの説明のような気がします。

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