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雲南紅茶(滇紅)は正山小種(ラプサンスーチョン)や祁門紅茶とならび、中国を代表する紅茶です。
本コラムでは雲南紅茶とはどういうお茶なのか、少し詳しく説明したいと思います。
世界で最初に開発された紅茶は、福建省武夷山の正山小種で1600年代との記録があります。
その後、正山小種の需要と値段の増加に伴い、正山小種の作り方を模倣して作られたのが、祁門紅茶の始まりです。祁門紅茶は安徽省祁門県にて1800年代に作り始められました。
一方、雲南紅茶の歴史は非常に浅く、1930-40年代が雲南紅茶の黎明期と言われております。
滇紅=雲南紅茶の別名
雲南紅茶は「滇紅」とも呼ばれます。「滇」とは雲南省を示す言葉です。雲南省の紅茶なので、滇紅と呼ばれます。
従って、雲南紅茶(雲南省産の紅茶)=滇紅です。分類的に雲南紅茶の1つに滇紅という種類の紅茶があるわけではありません。
ミルクティに向く雲南紅茶
雲南紅茶の加工における特徴は、萎凋が軽い点です。これは意図してそうしていると言うより、萎凋を行う技術力が無いことから結果的にそうなっているとも言えます。加え、元々原料の質が高い雲南省なだけに、萎凋をあまりしなくても、茶葉の個性が強く感じられ、高い品質のお茶ができる点も、現地生産者が萎凋をあまり重要視しない理由でもあります。
雲南紅茶の多くは、萎凋は軽めで、比較的しっかりと発酵が行われます。
HOJOでは標準的な作り方の雲南紅茶も紹介しておりますが、生産者に技術指導をすることで、萎凋を強く行った紅茶の生産も行っております。萎凋を強く行うことで、香り高く寄り華やかな紅茶が出来ます。
金芽を多く含む雲南紅茶が品質的にベストなわけではない理由
高品質な雲南紅茶は金色をしていると信じて疑わない人が多くいます。
お茶が金色になるメカニズムですが、お茶を揉むことで芽の産毛にお茶のエキスがつき、それが発酵するとことで黄色(金色)に変色します。
このため、芽の部分が全体に占める割合が高いほど金色になります。例えば、芽だけで摘まれる単芽茶(金芽茶)、1芽1葉で摘まれたお茶などは、芽の割合が高く、金色になります。
芽だけや1芽1葉でお茶を摘むのは非常に手間がかかるため、当然値段は高くなります。
ただ、大事なのは値段が高い=品質が優れているわけではないという点です。これには2つの理由が有ります。
まず、芽にはアミノ酸が多く含まれる反面、香り成分に寄与する物質やポリフェノールが少ないため、芽だけから作られたお茶は口に含んだときのクリーミー感が有る反面、香りや味が弱く感じられます。一般に香りと味のバランスが良いのは1芽2葉くらいで摘まれたお茶です。
二つ目に、標高が低く、肥料を沢山与えて栽培された茶園の場合、見た目の美しさ、値段の高さとは裏腹に、味に奥行きがなく、後味のフラットなお茶になります。
金色のお茶はあくまで「摘む手間がかかっているから高い」と覚えておいてください。
雲南紅茶の主要産地は臨滄市の鳳慶県
雲南紅茶(滇紅)は雲南省のお茶産地で広く作られてはいる物の、主要産地は臨滄市の鳳慶県と呼ばれる地域です。尚、中国の場合、市の下に県があり、中国における県は日本の郡に相当します。臨滄市は、鳳慶、雲県、永德、鎮康の4つの県から成ります。鳳慶県は臨滄市の中心地方都市である臨翔区に隣接しており、臨滄空港からも比較的近いなどの交通の便が良く、雲南省のお茶産地の中では極めて発展している街です。
鳳慶県の特徴は漢民族の人口が非常に多い点です。雲南省は全体に少数民族の割合が高く、お茶産地の多くは少数民族によって構成されており、通常は漢民族が少数派です。
漢民族は全体に教育レベルが高く、また、他省との繫がりも強いことから、情報収集能力、営業力が高く、全体に少数民族よりも商売の点で長けています。
プアール茶と比べると、生産工程が複雑であり、多くの装置、技術を必要とする紅茶生産が鳳慶で発展したのは、漢民族中心と言う民族性が大きく関係しております。
品種が中心の鳳慶産雲南紅茶
雲南紅茶の主要産地は鳳慶県ですが、近年では雲南省における他の地域でも、紅茶が生産されております。多くは、プーアル茶を主力とし、副業で紅茶を生産するケースが多いようです。
鳳慶県と雲南省の他産地とでは、使われるお茶に大きな違いがあります。
品種物のお茶(左)と実生のお茶(右):実生茶は直根を形成する。
鳳慶では、鳳慶大葉種のような紅茶に適した品種ものが中心であり、また、日本や台湾のような慣行栽培茶園が茶園の殆どを占めます。量産に適した方式ですが、量産方式であるため、品質は後味は軽めで、香りの余韻も弱めです。
鳳慶県の茶園
但し、鳳慶における製茶技術は全体に高く、また、慣行栽培ゆえに芽の部分だけから作られる金芽茶なども積極的に作られることから、余韻はやや軽めではあるものの見た目の良さと安定した製茶技術ゆえに、お茶によっては非常に高額の値段がつきます。
品質が高いのは標高の高い僻地のお茶
鳳慶県以外の地域の雲南紅茶はプアール茶の生産に使われる、種から撒かれた「実生茶」が中心です。茶園の方式も喬木方式と言って、慣行栽培ではなく、果樹園のように1本1本が独立して植えられたお茶です。
高い品質を生み出す喬木方式のお茶の老茶樹:鎮康県の山村にて
上記条件(実生・喬木方式)のお茶はミネラルが濃厚であり、品質の点で品種ものよりも遙かに優れております。加え、標高が高く、無肥料無農薬栽培の老樹ともなると、茶葉原料の質が極めて高く、長い余韻、体に染み入るような濃い後味が感じられます。
ただ、残念な事に、その様な良質なお茶産地の多くは非常に僻地に位置しており、概して製茶技術が低くいのが実情です。殺青温度が高すぎるために、焦げ臭がしたり、殺青不足による過発酵になっている紅茶を多く目にします。
ある意味、非常に高い原料を求めたら鳳慶県外、素材の品質はそこそこではあるものの、安定した製茶技術を求めたら鳳慶県の雲南紅茶というのが一般状況です。
また、鳳慶産の紅茶は広く流通していることから仕入れも容易です。
原料茶葉と製茶品質の両立
理想は僻地にある良質な原料を使い、鳳慶並みの高い製茶技術でお茶を作ることです。
HOJOでは雲南紅茶には非常にこだわっており、後味が濃く、余韻の長いお茶を求めています。このため、私達は、鳳慶県ではなく、自然栽培の老木が多く存在する、永德県や鎮康県の山間地の標高2000m以上の産地、樹齢百歳以上の老木で尚かつ、無農薬無肥料のお茶を使用した紅茶を仕入れております。
僻地の生産者は生産技術が低い傾向にあると書きましたが、もちろん、中には腕の良い生産者も存在します。HOJOではこれまで数多くの生産者を訪れ、僻地で有りながら生産技術が優れた生産者を探すことで、原料品質と製茶技術の両立を図っております。
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