寒くなると、発酵度の高いお茶が美味しいと思うようになります。私が販売している烏龍茶の一つに東方美人というお茶がありますが、このお茶は烏龍茶の中では発酵度が非常に高く、烏龍茶と言うよりもどちらかというと紅茶に近いお茶です。

東方美人の香りにはウンカが貢献

6月、雨期が終わった後に大量発生するウンカにより汁を吸われた茶葉は、その部分が黄色く変色し、最終的にバナナの皮のように黄色くなります。黄色く変色した茶葉は、虫に対抗すべく、「抗体」に相当する物質を作り出すわけですが、不思議にもそのような状態の茶葉から作られたお茶は、まるでマスカットのような香りがすることから、英語ではマスカテルフレーバー、日本語では蜜香と呼ばれております。因みに、東方美人は虫が汁を吸った茶葉のみから作られることから、「虫=無農薬」と考えられがちですが、台湾における殆どの東方美人の茶園は無農薬茶園ではありません。農薬を使用しているものの、ウンカの時期になると農薬の利用を止める場合が殆どのようです。私は完全無農薬茶園産を選んでおりますが、無農薬の東方美人を捜すのには随分と苦労しました。

東方美人は熟成させることで香りが増す

さて、東方美人の場合、収穫されたその年はマスカテルフレーバーが弱めに感じられます。収穫後、1年ほど常温で保管することで、熟成(非酵素的な酸化)し、香りも後味の甘さも強度を増すのです。

東方美人をいれるときの温度

東方美人ですが、香りを強く出そうと思うと、ついつい高温にて淹れてしまいがちです。沸騰しているお湯を使った方が、香りは明らかに強く出ます。
東方美人の場合、茶摘みの時期が遅いため、収穫場所によっては渋味を伴うこともあり、お茶の品質によっては高温でいれない方が良い場合があります。その場合、一旦沸騰した湯を80-85℃まで少し冷やしてから淹れると、味は円やかになり、まるで水飴を水に溶かして飲んでいるかのようにマイルドな味わいを楽しむことが出来ます。

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