東方美人
台湾烏龍茶と言えば、高山茶に代表されるように微発酵のお茶が中心ですが、その中で異彩を放っているのが東方美人茶です。知られているようで知られていない東方美人茶について、やや科学的視点から説明したいと思います。東方美人は時間をかけて非常に深く発酵が行われており、茶葉をを見た場合、烏龍茶と言うよりも紅茶に近い外観のお茶です。ただし、加工の順番的には、萎凋・発酵→殺青→揉捻なので、烏龍茶と定義されております。紅茶の場合、萎凋→揉捻→発酵→殺青となり、東方美人の工程とは殺青と発酵の順番が逆です。

熟れたマスカットの甘い香りがする東方美人

東方美人の最大の特徴は中国語で蜜香と呼ばれる、甘い、マスカットのような香りがすることです。私としては、貴腐ワインのような香りと個人的に感じております。
この香りはどうやって作り出されるかご存じですか?
東方美人は普通の茶葉からは作る事が出来ません。一般的な台湾烏龍茶と同じ基準で摘まれた茶葉から東方美人を作って場合、全く蜜香のしないお茶になります。東方美人の蜜のような香りを作るには、特別な茶葉のみを収穫する必要があります。
東方美人の茶葉

ウンカが汁を吸った茶葉のみから作られるお茶

東方美人の独特の蜜香を作り出すためには、ウンカが汁を吸った茶葉のみを集めることで作り出されます。日本の緑茶農家にとってウンカは害虫ですが、東方美人を作る上ではウンカの役割は重要です。ウンカに汁を吸われた茶葉には黄色の斑点が生じます。更に何カ所も汁を吸われると葉全体がバナナの皮のように黄色く変色します。さらに、ウンカに汁を吸われたお茶の葉は、外敵から身を守るためにファイトアレキシンと総称される物質を作り出します。ファイトアレキシンは人間で言う抗体のような存在と解釈してみてください。外敵から攻撃された植物が、事故防御のために作り出す物質の総称です。ファイトアレキシンについてはウィキペディアの解説を以下に引用します。
東方美人とウンカ

ファイトアレキシン(phytoalexin)は、植物が生物ストレスおよび非生物ストレスに応答して新規に合成する、抗菌性の二次代謝産物の総称である。非宿主抵抗性の一環として機能し、広範囲の病原に対して有効であり、植物種ごとに様々な種類の化合物が存在する。テルペノイド、グリコステロイドおよびアルカロイド等を指すことが多いが、これらに限らず植物の抵抗性反応に関わるファイトケミカル全般をファイトアレキシンと呼ぶことが多い。ファイトアレキシンの合成には、きっかけとして微生物やそれらが作り出す化合物、紫外線などのエリシターが必要であり、通常の生育条件にある健康な植物体では合成されない。

 
テルペノイド=テルペン類のことで数百種類のテルペンという名称の物質の総称です。テルペンとはバラや柑橘系の甘い香り、様々な香水にも含まれる物質です。私達人間にとってはフルーツのような爽やかな香りですが、ウンカにとっては受けいれがたい香りなのでしょうか?蚊はレモンの香りを嫌うと言いますし、虫除けスプレーなどの主成分もテルペン類です。昆虫は種ごとに特定のテルペンの香りを苦手とするのかもしれません。東方美人の蜜香も同じくテルペン類と考えられており、ウンカの攻撃により茶葉が作り出したテルペン類が、発酵工程を経て酸化することで、マスカットのような独特の香りを作り出すと考えられております。

東方美人以外で蜜香のするお茶

蜜香がするお茶は東方美人だけではありません。ウンカが汁を吸った茶葉を使用し、発酵茶を作れば自然と蜜香が生じます。私のラインアップですと、蜜香高山茶、蜜香黄金芽、蜜香香茶などのお茶が蜜香を発します。この他、ダージリン2ndフラッシュの一部に感じられるマスカテルフレーバーも全く同じ原理で作られます。

東方美人の味の特長

東方美人の味の特長はボディが軽い点です。私はこれまで、様々な種類の東方美人を試飲してきました。普通のグレードから、超高級な品質まで体験したことがありますが、味の特長としては一貫してボディが軽めです。これは産地の土質が関係しており、土壌のカルシウムが少ない事が理由と思われます。東方美人を飲むと、濃厚な蜜香がするわりにスッキリして透明感のある味わいがするのはこれが理由です。HOJOでは蜜香黄金芽というお茶も販売しております。基本的には東方美人と同じ作り方のお茶なのですが、茶葉は凍頂山のものを使っております。凍頂山の場合カルシウムが豊富に含まれるために、同じ製法でもよりボディがあり、お茶がふくよかに感じられます。
東方美人の茶葉

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