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熟成や発酵に向くお茶と向かないお茶
- [2015.09.08] Written By 北城 彰(Akira Hojo)

お茶は生葉の状態では緑茶のような植物系の香りがしているのですが、上手に発酵や熟成をすることで花やフルーツのような甘い香りが形成されます。しかしながら、どのお茶でも発酵茶や熟成をすることで、フルーツや花の香りを引き出せるわけではありません。
お茶とフルーツの香りに共通する物質テルペン
お茶の発酵や熟成のさい、花やフルーツの香りに寄与する物質はポリフェノールです。ポリフェノールとは特定の構造(ベンゼン環に2つ以上の水酸基が付いた物質をポリフェノールと呼びます。)を分子内に持つ物質の総称です。お茶の場合、カテキン類、例えばカテキン、カテキンガレート、エピガロカテキン、エピガロカテキンガレート等々のポリフェノールが存在することが知られております。
ポリフェノールが酵素によって、或いは、非酵素的に酸化することで生じる物質にテルペンと呼ばれる物質のグループがあります。テルペンとはイソプレンを構成単位とする物質の総称です。化学的なことはさておき、実はフルーツの香りもテルペンと呼ばれる種類の物質が関係しております。烏龍茶や紅茶の香りがフルーツや花の香りと似ているのは、フルーツや花に含まれる香り成分と同じ物質がお茶の発酵や熟成によって形成するためです。例えば、烏龍茶に含まれるゲラニオールと呼ばれるテルペンは柑橘系の果物に、リナロールはラベンダーやベルガモットにも含まれます。テルペンは、ポリフェノールが酸化する過程で形成されることから、烏龍茶や紅茶の甘い香りの形成にはポリフェノールが重要な役割を果たしており、当然、ポリフェノールの含有量が多いほどより豊かな香りが形成されます。
肥料を与えるほどポリフェノールは少なくなる
お茶に含まれるポリフェノールですが、実はお茶の栽培方法によって含有量が大きく異なります。
以前にお茶に与える肥料とポリフェノール、アミノ酸の含有量の関係を分析結果に基づいて調べたことがありますが、肥料を与えるほど、ポリフェノールの含有量は少なくなることが分かりました。肥料栽培と窒素肥料無しで育てられた自然栽培茶に含まれるポリフェノールの量は実に倍以上の差が認められました。逆に、肥料栽培をしたお茶にはアミノ酸(テアニン)が多く含まれておりました。
旨味成分は発酵してもフルーツや花の香りを生み出さない
お茶のアミノ酸は「旨味成分」と呼ばれます。「旨味」=「美味しい」ではありません。旨味とは味の素(商品名)のようなアミノ酸独特の味を表現する言葉に過ぎません。「旨」という文字が使われていることで、あたかもアミノ酸の多いお茶が良いように思われておりますが、発酵茶に関して言うなら、アミノ酸の多いお茶は、発酵しても花やフルーツ香が弱いお茶になります。お茶にアミノ酸が多く含まれている場合、発酵により甘露飴のような香りを形成します。これはメイラード反応と呼ばれる反応が関係しており、お茶に含まれるアミノ酸が糖やポリフェノールと酸化反応することで起こります。
熟成や発酵を上手に行うためにはポリフェノールの多い茶を選ぶこと
アミノ酸を多く含むお茶を紅茶に加工した場合、メイラード反応により甘露飴的な香りが形成されます。ただし、アミノ酸を多く含むお茶を長期間熟成をした場合、やや腐敗臭を感じるような独特の香りへと変化します。これは長期間熟成することで窒素化合物が更に酸化されて各種の揮発性物質が生成するためです。逆に、アミノ酸が極力少なく、ポリフェノールの多い無肥料・低肥料栽培のお茶の場合、熟成によって、フルーツや花のような香りを形成します。熟成というとプーアル茶がよく知られておりますが、実はプーアル茶以外にも、ダージリン、烏龍茶、白茶を始め、日本の緑茶でも「適切な保存法による熟成」をすることでフルーツや花のような甘い香りが形成されます。ただし、重要なポイントはポリフェノールを多く含むお茶を選ぶことです。ポリフェノールを多く含むお茶=無・低肥料栽培茶であり、その究極は自然栽培茶だと思います。ダージリンで積極的に取り組んでいるバイオダイナミック農法も、窒素肥料を極力使わない農法であり、そもそもの目的はポリフェノールが豊富なお茶を作ることで、より強いフルーツや花の香りを作り出すためです。ダージリンでも窒素肥料を豊富に与えて栽培したお茶やアッサムティの場合その多くが、フルーティと言うよりも甘露飴に近い香りがします。
コクの強いお茶にはポリフェノールが多く含まれる
肥料栽培茶と自然栽培茶(無肥料栽培茶)を比較すると、自然栽培茶にはダントツで強いコクがあります。逆に、自然栽培茶に窒素肥料を与えると、お茶の収穫量は増えるものの、コクは減少します。つまり、お茶に含まれるポリフェノールの量は「コクの強さ」と比例関係にあります。窒素肥料を減らすほどポリフェノール含量が増え、コクが強いお茶になります。考えてみれば当然のことで、肥料を減らせば減らすほど、一本の木がつけることができる葉や枝の数は減り、また、葉のサイズは小さくなります。また、お茶の成長速度も遅くなることから、一枚のお茶に根から吸収されたミネラルが集中すると考えることが出来ます。お茶を熟成したい場合、或いは、生茶から発酵茶をつくる場合、ポリフェノールを豊富に含むお茶、つまり、コクがしっかりとしたお茶を選ぶことが重要なのです。
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