ジャスミン茶
ここ数年、高級ジャスミン茶が茶店から消えようとしております。なぜそうなっているのか、市場のカラクリを説明したいと思います。

ジャスミン茶の品質を左右するのは緑茶の品質

ジャスミン茶はジャスミンの葉や花から作られるのではなく、緑茶をジャスミンの花と混ぜることで、ジャスミンの花の香りを茶葉に吸わせます。ジャスミン茶の品質を左右するのは、使用するジャスミンの花の質もさることながら、一番重要なのはベースとなる緑茶の品質です。ジャスミン茶の場合、釜炒り緑茶が用いられますが、芽のみを使用した緑茶、1芯2葉の茶葉から作られた緑茶など、用いられる緑茶には幾つかの種類があります。最も質が高いお茶は芽のみから作られたタイプです。芽のみから作られた緑茶は釜炒りを非常にマイルドな条件でおこない、揉まずに仕上げられます。私が仕入れる緑茶も芽のみのタイプですが、仕入れるときには、火が強く入りすぎて焙煎臭がしないかどうか、渋味が無いかどうか等々、様々な品質要素に照らし合わせて緑茶を選びます。緑茶の品質の善し悪しは、そのままジャスミン茶の品質に影響するため、どれだけ良い緑茶を仕入れるかが良い品質のジャスミン茶を作り上げるための重要なポイントとなります。

ジャスミン茶

ジャスミン茶のベースとなる緑茶

ジャスミンの花とまるく丸められた緑茶を混ぜることで、花の香りを茶葉に移す工程

高級ジャスミン茶用の緑茶は福建省産

ジャスミン茶用の緑茶は福鼎大白などの品種です。この品種は香りが非常に穏やかであるため、ジャスミンの香りと絶妙なコラボレーションをします。この品種が栽培されているのは主に福建省の福鼎、福州などで、他の省ではマイナーな品種です。このような事情からジャスミン茶を作り上げる上で福建省のお茶への依存度が非常に高く、福建省産のお茶の相場、状況がジャスミン茶市場に直接的に影響します。

白茶の値段高騰により、ジャスミン茶用の緑茶の生産量が激減し値段が高騰

ジャスミン茶の原料茶葉の定番である福鼎大白種は、ジャスミン茶用の緑茶だけでなく、白毫銀針や白牡丹のような白茶にも用いられます。今から10年前頃は白茶を生産する生産者は少なく、多くのお茶関係者はジャスミン茶のベース緑茶の生産をしておりました。当時白茶はどちらかというとマイナーなお茶であり、また、鮮度が落ちると買いたたかれるために、生産者としては高需要であるジャスミン茶用の緑茶を主に生産しておりました。この為、ジャスミン茶用の緑茶は値段も安定しており、また、様々な選択肢がありました。
ところが2010年頃から白茶をプーアル茶のように保存熟成する文化が流行りはじめました。「わざわざ、白茶を熟成しなくても、、」と私は当初思いましたが、実際に熟成された白茶を飲んだとき、干しぶどうやアーモンドエッセンスを連想するような甘い香りに驚き、納得しました。これまで売れ残って不良在庫になる事が懸念されていた白茶ですが、経年熟成という新しい文化の形成により、お茶マニアに注目されはじめ、需要が拡大しました。その結果、白茶の値段は毎年上昇し続け、現在では非常に高値で安定しております。そうなると、生産者は皆、緑茶の生産をやめ白茶へと切り替えはじめ、その結果、良質な原料の殆どが白茶に加工され、ジャスミン茶用のベース緑茶の入手が極めて困難になりました。

加工中の白毫銀針(白茶)

保存用に緊圧された白茶

お茶市場のお茶は農薬管理が出来ていない

ただし、3月20日頃、実際に福鼎のお茶市場に行くと、昨今でも良い品質の緑茶を現実的な値段で見つけることが出来ます。これらのお茶は、農家が直接持ち寄ったものであり、中間マージンを含まないために安価に手に入れられます。「農薬は大丈夫ですか?」と聞くと、殆どの人が「このお茶は春の一番茶だから農薬は全く心配不要!」と力強く答えてくれます。ところが、実際にテストをすると、むしろ感動するほど多種類の農薬が検出されます。彼らが言うとおり、冬〜春には農薬は使われておりませんが、土壌中に農薬が含まれている場合、茶葉が吸収し、内部に蓄積している為です。福建省のお茶は中国国内での消費量が多いお茶であり、海外へ輸出されることを前提としていないため、多くのお茶農家では農薬に対する管理を殆ど行っておりません。お茶市場でジャスミン茶用の緑茶を仕入れるのは事実上不可能に近いのです。

福鼎お茶市場

福鼎お茶市場

農薬と品質を満たすお茶を仕入れるには予約生産

農薬と品質の両方を満たしているお茶は現在非常に稀少となり、現地へ赴き生産工場を訪問しても入手出来ないのが現状です。多くの工場では、一番良い原料は白茶として加工しており、ジャスミン茶用の原料は3番茶以降の低品質の茶葉が主となります。3番茶であっても、値段は数年前の一番良いグレードと同じくらいまで高騰しております。まして、一番茶から作られた無農薬茶園産緑茶の値段は非常に高く、この値段でも納得して仕入れるお茶会社はごく僅かです。したがって、多くの生産会社では1番茶から緑茶を作らなくなりつつ有ります。一番茶の芽のみから作られた緑茶を入手するには、事前予約をし、購入を約束した上で生産をして貰う必要があるのです。

今後高級ジャスミン茶を提供し続けるには雲南省産緑茶の開発が急務

HOJOでは2015は予約をすることで、辛うじて、原料を確保することが出来ましたが、今後、安定した値段と品質の緑茶を入手し続けることが出来るかどうか不安を感じております。このような事情から、現在、雲南省のお茶をジャスミン茶用のベース緑茶として加工する実験を進めております。しかし、雲南省のお茶工場は芽だけから緑茶を作る事に慣れておりません。今後、試行錯誤を繰り返し、生産方法を確立する必要があります。

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