中国茶好き必見!高級ジャスミン茶の作り方

[2018.10.31] Written By

これまで数回に分けてジャスミン茶について特集してきましたが、今回はジャスミン茶がジャスミンの花の産地である広西壮族自治区横県の工場でどのように香り付けをされるのか説明したいと思います。

ジャスミン茶用の緑茶は春に仕入れ秋に着香

ジャスミン茶のベースとなるお茶は春に仕入れます。ジャスミン茶加工用にはあまり個性が強すぎない緑茶を使うことが大切です。個性が強すぎる、つまり、香りが強すぎた場合、ジャスミンの花の香りと拮抗してしまうため、ジャスミン茶加工用としては好ましくありません。私が仕入れているジャスミン茶は高級な部類に属するため、緑茶は春に仕入れる物の、夏まで保管され、夏以降の雨が少ない時期に収穫された質の高いジャスミンの花を用いて着香を行います。廉価なタイプのジャスミン茶の場合、春〜夏に収穫されたジャスミンの花を使って作られます。

緑茶に新鮮なジャスミンの花の香りをすわせる工程

ジャスミンの花は当日に収穫された花が用いられます。着香を行う工場では、その日の生産スケジュールに基づいてジャスミンの花を仕入れます。花は着香目的ゆえ、仕入れすぎた場合、無駄になってしまうため、仕入れは仲買人を通じて行われます。花は、開花するまでは緑茶の上に敷かれ、開花が始まると、定期的に攪拌が行われます。攪拌は、花と緑茶を掬い上げ、空気中で拡散します。ジャスミンの花は開花する際に熱を放つため、この方法で攪拌を行わないと、熱によって花と緑茶が劣化します。
一晩を通じて、混合と攪拌が繰り返され、それによって緑茶はジャスミンの花の香りを吸収します。着香が終了後は、篩によって、ジャスミンの花は緑茶と分離されます。翌日回収された既に萎れてしまったジャスミンの花は、廉価なグレードのジャスミン茶の着香用にリサイクルされます。緑茶はこの後、低温にて乾燥が行われ、次回の着香に備え、水分が下げられます。この際の乾燥技術ですが、生産者によってバラツキがあり、それがジャスミン茶の質を左右します。当然高い温度で乾燥してしまうと、水分ばかりかジャスミンの香りまで飛んでしまいます。

最初にジャスミンの花自体の選別をします。当日に咲かないような小さな蕾は除去されます。

花が開き始めるまで、夕方から夜にかけて、茶葉の上にジャスミンの花が敷き詰められます。

緑茶と混ぜられたジャスミンの花

着香終了後ジャスミンの花は緑茶から分離されます。

廉価なジャスミン茶はリサイクルの花で着香を行う場合もあります。

意外に知らないジャスミン茶に使われるモクレンの花

意外に知られていない事実ですが、ジャスミン茶の着香の第1段階はモクレン(マグノリア)の花で着香が行われます。モクレンの花を用いる目的ですが、緑茶特有の香り個性を消すためです。伝統的にジャスミン茶にはモクレンが使われているため、仄かなモクレンの香りがあることで、「ジャスミン茶らしい香り」に仕上がります。ただ、生産者によっては、モクレンを多く用いすぎる場合があり、その様に作られたジャスミン茶は酸っぱいような特有の香りを放ちます。私が仕入れているジャスミン茶は、極少量のモクレンの花を用いて処理をしており、言われなければモクレンの花が使われていることが分からないレベルに留めております。ジャスミン茶も種類によってはモクレンを使わない作り方があります。来年はモクレンを使わないジャスミン茶も作ってみようと思っております。

モクレン(マグノリアの花):この花の香りも素晴らしいです!

着香の回数と堤花と呼ばれる大事な工程が大事

ジャスミン生花による着香はその回数が多いほど香りが強くなります。高級なジャスミン茶になればなるほど、何回も(幾晩も)着香を繰り返して作られます。ただし、前述したように、乾燥を上手に行わない場合、折角回数を増しても良い香りに仕上がりません。通常、ジャスミンの花との混合→乾燥の順番で作業が進められますが、高いグレードになると、最後にジャスミンの花と混ぜた後、全く、乾燥を行わない「堤花」という仕上げ方をします。この方法だと、それ以降乾燥を行わないため、新鮮な花の香りが際立ちます。私はコストをかけても堤花を行うようにしております。

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