ウンカがちゅ〜ぅと汁を吸うとダージリンティに蜜のような香りがする理由

[2006.12.09] Written By

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ダージリン夏摘み(2nd Flush)と言えばマスカテルフレーバーです。マスカテルフレーバーとは熟したマスカット(ブドウ)のような香りをさします。私の個人的な意見では、マスカットと言うよりも、熟したマンゴのような香りに感じます。同様の香りは中国語では蜜香という言葉で表現されます。

何故、2nd Flushにのみマスカテルフレーバーがあるのでしょうか。また、何故、まるでフルーツのような香りが生成されるのでしょうか?
マスカット系のフレーバーと言えば、台湾の東方美人にも同じ香りがあります。東方美人の場合、ウンカに噛まれた茶葉のみを使用して作られます。

ダージリンのマスカテルフレーバーを一番最初に紹介したのは、キャッスルトンという農園でした。日本でも非常に馴染みの深いこの農園は、1500m前後の標高に位置しており、ダージリンの街の直ぐ近くにあります。

ダージリンのマスカテルフレーバーも実はウンカにより作り出されます。ダージリン地方では、ウンカのことをGreen Flyと呼んでおります。たしかにウンカが飛び回る様子はハエのように見えます。

茶園に連れて行ってもらい、ウンカを探したところ、、、「見つけました!」
台湾のウンカと、全く同じ種類でした。動きも、サイズも、色も、何もかも100%同じです。
2ndフラッシュにのみマスカテルフレーバーが生じる理由ですが、5月はダージリン地方では雨期になります。6月になると激しい雨がやみ、時同じくしてウンカが大量発生します。大量に発生したウンカは、茶葉の柔らかい部分から汁を吸います。汁を吸われた茶葉は、黄色く変色し、その部分だけを摘みとって加工すると、おなじみのマスカテルフレーバーができます。ウンカとマスカテルフレーバー発生の関係ですが、虫により攻撃を受けた茶葉は、それに対抗するため、或いは治癒するために人間の抗体に当たる物質(ファイトアレキシン)を作り出しますが、これらが香りの正体です。

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最近ではキャッスルトンだけでなく、多くの農園で同等或いはそれ以上のマスカテルフレーバーを作り出すようになりました。但し、ウンカはそれぞれの茶園の何処にでもいるわけではなく、極一部の場所にしか現れません。茶園のマネージャーはその場所を良く把握し、そこから収穫された茶葉に関しては、「特別扱い」をしなければなりません。普通の茶葉と同じように加工したのでは、十分にそのメリットを生かし切ることが出来ません。ウンカに噛まれた茶葉は普通の茶葉と比べ、水分量も少なく、故に萎凋時間や発酵時間に関し、特殊な調節をしなければなりません。

ウンカですが、渡り鳥のように遠くから飛んでくるわけではありません。彼らはダージリンの土地にて卵を産み、6月になると羽化して、茶葉の汁を吸います。ウンカに確実に羽化してもらうためには、やはりマネージャーの知識が大切になります。マネージャーはウンカ保護区(私が勝手にそう呼んでいる。)の土壌の取り扱いには特に気を付けねばなりません。通常の茶園の場合、冬場には土地を掘り起こし、肥料の散布を行います。ところが、ウンカ保護区の場合、冬に土地を掘り起こしてしまうとウンカの卵が寒さや乾燥で死滅してしまい、春になっても羽化しなくなります。土だけでなく、茶園の間に生えている雑草に関しても刈り取ってはならないそうです。茶園ではマスカテルフレーバーを作り出すために、ウンカにとって最高の生活環境を提供しないといけません。

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