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現在市場に流通している正山小種(ラプサンスーチョン)の実情
- [2013.01.06] Written By 北城 彰(Akira Hojo)
第54号 2013年01月06日発行
中国を代表する紅茶の1つ正山小種(ラプサンスーチョン)は謎が多く、紅茶愛好家の間でも常に話題に上るお茶です。
このお茶は中国で最も進化が速い紅茶ではないかと思います。
正山小種と言うお茶は、本来は武夷烏龍茶とならぶ、高価な岩茶です。それもそのはず、正山小種の産地である星村の桐木関は武夷山の国定公園内にあり、このエリアではほとんどの農家が無農薬栽培を実践しております。
紅茶の代わりに烏龍茶を作ればかなり高い値段で売れるところを敢えて紅茶を作っているだけに、売値もなかなか強気です。
正山小種の正山は、真性のとか、本物のと言う意味を含みます。大量に流通したコピー品と区別するためにこのような名称になったと言われております。
現在、正山小種の名称で流通しているのは7種類のお茶
この正山小種ですが、コピー品や諸々の種類を含め現在は7種類に分類されます。それぞれの特徴を簡単にまとめまてみました。
1. 武夷山桐木村外の地域で作られた茶葉を雑木で燻製にしたお茶。
これは海外への輸出用に大量生産されているお茶です。安い紅茶原料を大量に仕入れ、燻製室で煙だけつけて出荷されます。
発酵が適切に行われていない原料が多く全体に質がよくありません。松ではなくて普通の雑木が燻製用原料として使われます。
2. 武夷山桐木村外の地域で作られた茶葉を松の煙で燻製にしたお茶。
このタイプは松の木が使われているため、香り的には割と本物っぽく感じられます。茶葉は安徽省や福州など様々な地域から集められ、松の木を燃やすことで煙りの香りを付与します。同じく海外向けに多く出荷されておりますが、品質的には1よりも優れたものが多く、値段が安いのが特徴です。
もともと、武夷山で収穫されたお茶に煙の香りを付ける作業は外部の下請け会社がやっており、香り付けされたお茶は海外へ輸出されておりました。近年、武夷山産のラプサンスーチョンの値段が高騰したことから、輸出が困難になりました。その結果、武夷山産のお茶を受け入れる代わりに、他産地で作られた紅茶が原料として使われるようになりました。
3. 武夷山桐木村で作られたお茶+松で燻製
製法は2と異なります。2は普通に作られた紅茶を燻製にしております。このタイプは桐木村で作られており、武夷山に伝わる伝統的な生産方法を踏襲しております。このタイプの場合、伝統的な製法の後に松による強制燻製がおこなわれます。松を燃やした炎による強い燻製は元来海外需要に対応して作られておりました。
ただし、近年武夷山の桐木村で作られているお茶は値段が高騰していることから、海外では流通が困難となりました。かといって国内では煙臭いお茶の重要はもともと無いため、この種類の正山小種は急激に減少しつつあります。桐木村の茶園はそのほとんどが無農薬栽培で作られており、農薬面では信頼できるお茶です。このタイプのお茶はある意味貴重です。
桐木村の茶園
4.武夷山桐木村にて伝統的な手法で作られたお茶
松の木を燃やした炎で萎凋と乾燥で作られるお茶です。松の火による乾燥はただ乾燥することを目的としているのではなく、低温でじっくりとお茶を焙ることでお茶の成分の熟成を目的としております。
じつは鳳凰単叢烏龍のフルーツのような香りもこの方法で作られます。完成した茶葉は龍眼の香りがし、茶葉はあまり煙り臭くありません。どちらかと言うとキームン紅茶に近い香りがするお茶です。これが一番オーソドックスな正山小種と言えるかもしれません。
正山小種を作るための3層になった建物。この一階部分で松が燃やされる
5. 武夷山桐木村にて作られる金駿眉と呼ばれる恐ろしく高いお茶。
原価でもキロ何十万円もします。金駿眉は香りも質もどちらも優れたお茶で1度飲んだら忘れられないお茶です。紅茶なのですが、トロピカルフルーツのような強い果物の香りがし、味わいは軟らかく、喉の奥にふわりと香りが広がります。
本物は恐ろしく高く、一般の人の口に入ることは殆ど有りません。私は桐木村の生産者から直接購入した金駿眉を200gほど持っておりますが、今では値段が高騰してしまい同じ商品も当時の値段で買うことは出来ません。
そんな、金駿眉ですが、中国の空港から街まで、どこへ行っても金駿眉という名称のお茶が氾濫しております。もちろん街に溢れる金駿眉の殆どが本物ではありません。
本物の金駿眉の茶葉の写真
6. 武夷山桐木村以外の地域にて作られた、金駿眉の偽物
このお茶は金駿眉を模倣したお茶です。非常に優れた品質である金駿眉の名声が中国全土に鳴り響いたために、何百という工場が一斉に偽物を作り始めました。そのほとんどは武夷山以外の地域で普通に作られたゴールデンマンキー等のような安価なお茶を、豪華なパッケージに包み販売しております。このお茶は産地も、製法も異なるため、もはや正山小種とは全く関連性がありません。近年中国に旅行した多くの人が、金駿眉を飲んだと言います。
また、「金駿眉は値段は高いが大したお茶ではない」と話すのも良く聞きます。
市場に出回っている金駿眉のほとんどが偽物という事実は多くの人が知りません。中国で、金駿眉という銘柄のお茶を見たら偽物と思った方が正解です。
7.武夷山桐木村で金駿眉を意識して作られた紅茶。
火入れ熟成が不完全、またはほとんど火がいれられておらず、普通の紅茶の香りしかしないものが大半。このタイプのお茶は、4番のタイプともにており、両タイプの中間的なお茶もあり非常に分かり難いのが実情です。
桐木村産の原料は無農薬・無肥料のものが大半であるため、茶葉の質は良く、お茶としては非常に良い品質のものが多く見られます。ただ、正山小種の伝統的な作り方は全く踏襲してないお茶も多く、このお茶を正山小種と呼ぶべきかどうかが微妙です。
キームン紅茶も正山小種の1つ
もう少し範囲路広げると、安徽省のキームン紅茶もあるいみ正山小種の一種ではないでしょうか。
キームン紅茶は正山小種の製法を模倣して作られていることから、質の高い物になるほどに正山小種(4番のタイプ)にとても近い香りがします。
私は今年から正山小種を本格的に取り扱う予定です。希望としては、3番、4番、5番の3種類のお茶を仕入れたいと計画中です。今年の仕入れに期待しててください。
新商品入荷情報
ダージリンオータムティ3種が入荷
https://hojotea.com/item/b06.htm
今年仕入れたのは以下の3種類です。今年はどれも異なる個性のお茶で、個人的に結果に満足しております。ファーストフラッシュが人気のダージリンですが、発酵度が高く、香りが濃い、オータムティは今の季節にピッタリのお茶です。
アーリア エステート
まるで教科書に出てくるダージリンと言って良いような典型的なオータムティの香りのするダージリンです。コクも程良く強く、茶葉の発酵も良くコントロールされており、甘い香りがお菓子とも良く合います。
ちなみにAryaエステートは有機認証を取得している茶園でもあります。
ジュンパナ エステート
ジュンパナと言えばダージリンの数ある茶園の中でも特に有名な茶園の1つです。
この茶園は標高が非常に高く、2000mという高所に茶園が位置しております。
そんなジュンパナですが、意外にファーストフラッシュは人気がありません。原料は抜群に良いのですが、ファーストフラッシュの生産があまり得意ではないみたいです。
それに反して、ジュンパナのオータムティは愛好家の間ではとても有名なお茶です。ジュンパナの場合、オータムティにもかかわらず発酵度が低めに管理されております。
紅茶は発酵度によって以下の様な傾向を示します。
超微発酵:緑の香り、草
微発酵:花のような香り
中発酵:フルーツの香り
重発酵:乾燥フルーツの香り
ジュンパナの場合、発酵が弱めと言うこともあり、強いフルーツの香りがします。杏のようなマンゴのような、ブドウのような甘い香りが特徴的です。
ダージリンレイトハーベスト(ゴパルダラ エステート)
通常であればお茶摘みが終了する11月の後半に摘まれた冬茶です。この時期、朝夕の温度は非常に低く3℃程度まで温度が下がります。昼夜の温度差が非常に大きく、また、日中も温度が低いため、お茶の葉はほとんど成長する事が出来ません。茶葉は、小さく、黄色くなり、木の上でじっと寒さに耐えているためか、厚みのある茶葉になります。
例えは適切ではないかもしれませんが、まるでアイスワインのようなお茶です。
ミネラルが豊富に含まれており、非常に深いコクが感じられます。
しっかりと発酵されているため、香りは濃厚で、少しスパイシー、そして最後に柑橘系の香りがするとても癖になるお茶です。
ここ数週間で非常によく売れているお茶の1つです。
■発行責任者:北城 彰(株式会社HOJO代表者)
■発行元:お茶の専門店HOJO https://hojotea.com/
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Lot No. T-215, 3rd Floor, Mid Valley City, Lingkaran Syed Putra
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