煙の香りが全くしない正山小種( ラプサンスーチョン ) 小赤甘

[2017.08.02] Written By

正山小種 小赤甘2017を発売しました。正山小種(別名ラプサンスーチョン)というと煙の香りを連想されると思います。しかし、小赤甘は正山小種と言う名称でありがなら全く煙の香りがしません。このお茶がどういうお茶か理解して頂くために、正山小種の歴史背景を説明したいと思います。

キャサリン王女が飲んでいたのは紅茶、それとも烏龍茶?

正山小種(ラプサンスーチョン)のよく知られている話としては、1662年、イギリスのチャールズ2世とポルトガルのキャサリン王女が結婚した際、王女は彼女の大のお気に入りであるラプサンスーチョンを本国から持参したという話です。ただし、果たして当時キャサリン妃が持参したお茶が紅茶だったのか、烏龍茶だったかは謎です。1600年代は半発酵茶・発酵茶の黎明期でした。生産方法を試行錯誤する過程で、発酵後に揉む烏龍茶と揉んだ後に発酵を行う紅茶が同時期に誕生し、紅茶と烏龍茶の分類が明確に区別されたのはそれ以降の時代になってからと推察されます。

正山小種(ラプサンスーチョン)の語源

ラプサンスーチョンという名称の語源ですが、正山小種を閩南語(厦門を中心とする地方)読みするとラプサンスーチョンになります。武夷山の紅茶が人気を博すと、各地方でそれを模倣した紅茶が作られるようになりました。それら模倣品と武夷山産のオリジンルとを差別化するために、正山(ラプサン)という名称が用いられたと考えられております。また、小種(スーチョン)に関してですが、陆延灿が書いた続茶経に、武夷山では小種と呼ばれる品種が品質的に最も優れていたとの記載があります。つまり、武夷山に複数有る品種の中でも特によい品種が小種だったと思われます。

正山小種の生産方法を模倣して作られたキームン紅茶

1800年代になるとイギリスで紅茶がブームになったことから紅茶の需要が急拡大し、その結果、紅茶の価格が高騰しました。紅茶の高需要により安徽省の祁門縣(キームン県)では正山小種の製法を模倣して紅茶が作られるようになりました。正山小種、キームン紅茶の特徴は、紅茶を製茶後に炭火でベイキングし、お茶の香りを熟成することで、独特のフルーツ系の香りを高める生産方法です。この工程がゆえに、両紅茶とも工夫紅茶(功夫紅茶)と呼ばれます。着目すべき点は、キームン紅茶は正山小種特有の煙臭さがありません。キームン紅茶でも低品質のお茶になると煙の臭いがするお茶もありますが、良い品質のお茶は全く煙り臭くありません。正山小種の製法を踏襲しているにもかかわらず、「キームン紅茶は煙臭くない」という事実から読み取れる点は、キームン紅茶が模倣した1800年代の正山小種は煙臭くなかったという点です。

武夷山の桐木村には2種類の異なる正山小種が存在

となると、現在一般化している「煙の香りがする正山小種」が開発されたのは1800年代以降と推察されます。つまり、正山小種(ラプサンスーチョン)には2つの流があります。1つは1600年代から続く製法で、烏龍茶の製法を踏襲した炭火(松の木から作られた炭)による炭焙で仕上げられるお茶、もう一つは、イギリスとの貿易が盛んになってから人気を博した松の煙の香りがするタイプのお茶です。

現在も武夷山の星村には1600年代から続くオリジナルの正山小種が存在します。今回紹介する「正山小種 小赤甘」がそれに相当します。この他、桐木村には「金駿眉」を初め、伝統的な作り方の正山小種は未だに残っております。尚、金駿眉という名称のお茶は現在中国ではどこへ行っても買えるほどに一般化しておりますが、本物を生産しているのは1社のみで、本物は100gが数万円以上するお茶です。

お茶マニアの探求心をくすぐる正山小種 小赤甘とキームン紅茶の共通点

今回入荷した正山小種 小赤甘は武夷山の桐木村産のお茶です。発酵後のお茶をベイキングすることでローズ、乾燥フルーツのような甘い香りに仕上げられている点が特徴です。当然と言えば当然なのですが、高品質のキームン紅茶 (例えば特貢グレード)と香りの点で類似しており、キームン紅茶と正山小種との歴史的な繋がりを強く意識させられます。正山小種 小赤甘は、また、キームン紅茶工場製の特貢グレード並みに原料茶葉の質がよいのですが、その割に安価ゆえにキームンが好きな人には是非お勧めしたいお茶でもあります。

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