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中国茶というと烏龍茶やプーアル茶を想像される人が多いかと思いますが、中国で生産されるお茶の約70%(113 万 8,000トン)は緑茶です。つまり、中国茶 = 緑茶と言っても過言ではないくらいに中国には緑茶が溢れております。
事実、中国を旅したことのある人はよくご存じと思いますが、中国ではタクシードライバーも、街中のレストランでも、至るところで緑茶が飲まれております。
雲南省産の緑茶
緑茶の生産地は広く複数の省に分散しており、一般的には浙江省、江蘇省、安徽省、湖南省、湖北省、四川省、広西壮族自治区、福建省などがよく知られております。
上記の省に加え、実は雲南省でも緑茶が栽培されております。雲南省におけるお茶の栽培の内訳(2013年)としては、プーアル茶が48.8%、緑茶27.2%、紅茶が23.4%となっております。
雲南省における緑茶の生産量は中国全体の1%ですので、数字としては大きくありませんが、近代式のプランテーションで作られていることから今後より生産量が伸びると予想されます。その雲南省の緑茶生産の中心は、普洱県であり、主に現代農業方式で管理された茶園産のお茶が中心となっております。普洱県で生産される緑茶の特徴は以下の3点に集約されます。
- 現代農業方式の茶園産
- 蒸青緑茶(蒸気で殺青)が多い点
- 釜炒り緑茶の多くは、ジャスミン茶のベース緑茶として利用されている点
基本的に普洱県の緑茶は他の省での緑茶の値段が高騰したことで、より安価な緑茶の生産基地として発達しております。雲南省と言えばプーアル茶が非常に有名であり、上記の統計でも雲南省におけるプーアル茶の生産量は約過半数を占めております。ただ、雲南省の地方都市や昆明のレストランに入ると、出されるお茶の殆どが緑茶であることに驚かされます。
余談ですが、雲南省の街中で飲む緑茶は本当に美味しくありません。雲南省ではアルミのヤカンに緑茶を入れる文化があり、雲南省のレストランなどで出される緑茶は質が低いのに加え、アルミの影響で渋さとフラットさが強調され、非常に後味の悪いお茶に感じられます。
緑茶生産には設備と技術が必要なため、山奥での緑茶生産は少ない
一般的に緑茶の生産には技術者の熟練度と緑茶用の生産設備、特に乾燥設備の充実が求められます。このため、雲南省の山奥でプーアル茶を作っている農家では緑茶を作ろうと考えないし、仮に作ろうと思ったとしても乾燥設備がないために、生産は現実的ではありません。自然栽培のような良質の原料茶葉はプーアル生茶に加工してこそ高値で売れるため、農民は緑茶への加工を望まず、山奥で作られ、手で摘まれるような自然栽培茶から加工された緑茶には過去に出会ったことがありませんでした。
自然栽培茶から作られた緑茶
私は今年の春、臨滄における、雲南省とミャンマーとの国境地帯周辺で多くの時間をかけ生産者の探索を行いました。この地域には今も自然栽培茶が残っており、それを上手に加工できる小規模な工場を探すことが今年の最重要課題でした。実は少数民族の村がある山の周りを徒歩で10km近く歩き回りつつプーアル生茶の小規模生産工場の探索を行っていたところ、偶然緑茶の加工を行っている工場を見つけました。この工場の周りは完全に少数民族の集落に囲まれており、工場では自然栽培茶から作られた緑茶とプーアル生茶の生産を売りにしておりました。
お茶は蒸気で蒸したタイプと、釜炒りのタイプの2種類があり、どちらとも決めかねたため両方仕入れました。蒸気で蒸したお茶と言うと、日本茶を連想するかと思いますが、雲南省における蒸青茶は日本茶と全く異なる性格をしております。香りは日本茶のそれとは大きくかけ離れており、表現すると甘栗と桃と梅の中間のような香りです。ナッツのようにも、フルーツのようにも感じられる香りですが、何よりも、喉越し(コク)が恐ろしく深く、香りと甘みの余韻がいつまでも続く点が最大の特徴だと思います。雲南省には緑茶があるものの、質が低いため、完全な自然栽培茶から作られた緑茶を前から探し続けておりました。今回仕入れたお茶は、雲南省の緑茶らしい個性を有し、同時に深いコクが楽しめるため、私自身とても満足しております。
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