極上の大和煎茶の産地、奈良県月ヶ瀬。その昔は琵琶湖の湖底でした。

[2011.11.27] Written By

月ヶ瀬のお茶の品質を非常に高めている最大の要素は月ヶ瀬という地域にある超良質の土だと思います。
実際、月ヶ瀬の土壌で育つと静岡でも一般的な藪北種やべにふうきのようなごく普通の品種のお茶でも極めて深い喉越しになります。
これに加え、在来種、剪定を極力抑え成長速度を遅くしたお茶は、普通の日本茶には全くない深い喉越しと、スッキリとした香りへと作り込まれます。
但し、月ヶ瀬産ならどのお茶も良いというわけではありません。
静岡茶やその他多くのお茶産地は「河岸段丘」という地形により構成されております。
河岸段丘とは、文字通り川による浸食で出来た地形です。
定期的に繰り返される鉄砲水などにより、土地が削られ、同時に上流部の土砂が押し流されてきて来ることで、既存の土と新たな土とのブレンドが行われます。
月ヶ瀬のエリアの何カ所もの茶園をまわりましたが、有る共通点に気がつきました。
実は山のように見える丘陵地帯とその肩の部分にのみ良質な赤土が存在し、そこから少しくだったスロープ地帯は砂と赤土が半々に存在します。
更に、下の方にある広々としたなだらかな土地の多くは砂地となっております。
面白い事に、美味しいお茶が出来るのは赤土の純度が高い土地であり、標高が下がるにつれ、土質が変化することで、同じ人が作っていてもお茶の品質が劇的に変わります。
つまり、月ヶ瀬の土地はその大昔は、点在するの山のレベルだったのが、川による浸食で土地が低くなったのだとおもわれます。
下の図に示すように、一般的な層は、上から腐葉土、赤土、砂により構成されております。
腐葉土と砂はお茶の品質には殆ど寄与しません。
tsukigase.gif
上の図のような土地でお茶を作った場合、根は赤土に届き、非常に良質のお茶が出来ます。
但し、上の図のように土地が浸食された場合、根が届く範囲に赤土層があるのは山のうえとその肩部分(茶園A)のみとなります。
少しくだった場所(茶園B)は、川で浸食された際に上流から流されてきた砂と赤土との混合層、更に下に行くと、完全な砂地(茶園C)となります。当然、お茶の品質はA>B>Cの関係となります。
月ヶ瀬でも、大量のお茶が砂地でも作られており、そちらの品質に関して言うと、味に奥行きが殆ど感じられませんでした。
私は月ヶ瀬の農家の方と親しくお付き合いさせて頂いているお陰で、自分の好みの茶園からお茶を買わせて頂いており、結果的に私が購入している茶園は、山の上にある赤土が高純度に含まれる茶園でした。
tsukigase02.jpg
実際の月ヶ瀬の地形

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