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雲南省臨滄永徳の忙肺
今年、臨滄の中でも急速に知名度が上がりつつあるプーアル生茶の産地、忙肺という村へ行きました。この地域は、昨年までアクセスが容易ではなく、忙肺のお茶は一部のお茶マニアにしか知られておりませんでした。ところが、1年の間に突貫工事により道が建設されたことで、最寄りの町、永徳から1-2時間で行けるようになりました。

道ができることによる弊害

アクセスが容易になったことで茶園には大きな変化が起きておりました。昨年まで自然栽培だった茶園からは、これまで茂っていた雑草が消滅しており、茶園の地面が至る所で掘り起こされておりました。地面が掘り起こされているのは、肥料が施肥されている証しであり、急速に現代農業の波が押し寄せていることを意味しております。周辺を数時間歩き回りましたが、自然農法の茶園は激減しておりました。忙肺のお茶は、ボディコク共に強くとても良いお茶だったのですが、今後、急速にお茶の質はコクの点で低下してゆく事は確実です。また、1つ良い産地のお茶の質が失われるかと思うととても残念な気持ちになりました。仮に自然栽培に戻そうと思った場合、8年以上の年月を必要とします。

プーアル茶の産地

山の上まで舗装された道ができていた。

電信柱には肥料の宣伝も

プーアル茶の値段高騰の多くは間接的に役人が関与

雲南省のお茶は現地政府の思惑により値段が高騰することが多々あります。多くの場合、政府の役人が間接的にお茶の商売にかかわるようになり、需要を増やすために道を整備することで観光客が激増し、その結果値段が高騰します。
山奥の産地の場合、道路が整備されていないため、現地に到着するのに最寄りの町から5-10時間以上かかるなど、通常では観光客がいけるような状況ではありません。特に、道が舗装されてない場合、雨が降るごとに道がぬかるみ、普通の車では進むことすら出来なくなります。

このような状況下、政府が新しい道に投資した場合、多くの観光客が来るようになります。産地へ観光客が押し寄せるようになると、茶の値段は短期間で高騰します。これまでも同様の例が多く見られました。臨滄の冰島、四双版納の布朗山、老班章なども道の完成と同時に値段が急上昇しました。もともとアクセスが非常に困難ゆえに値段がある程度安定していた地域が、道の完成と同時に値段が高騰するのは雲南省の有名産地では頻繁に見られる現象です。

値段高騰による自然栽培茶への影響

値段が高騰しても市場ニーズがあるのであればそれはそれでよいのですが、私が問題視しているのは、急激な価格高騰による「自然栽培の破壊」です。
雲南省で常に起きていることですが、値段が高騰すると、生産者は単位面積当たりより多くのお茶を生産しようとします。その結果、従来の自然農法から現代農法、つまり、質よりも量に重点を置いた農業へとシフトします。道が開通すると、その周辺に位置する茶園では一般に以下の変化が起こります。

  1. 窒素系肥料の使用
  2. 農薬の使用
  3. 枝の剪定
プーアル茶茶園

肥料が入り、また、剪定をすることで収量を増やしている茶園:木の根元は老木だが、上の枝を落とすことで新しい枝をのばし、故意に収量を増やしている。

虫は窒素を多く含む茶葉が大好き

有機無機に関係無く窒素肥料を与えると、お茶は勢い良く成長するようになります。その結果、収穫量は飛躍的に増加します。ただし、窒素を大量に吸収したお茶は、茶葉内にいったん窒素を蓄積するため、茶葉は虫が好みやすい味へと変化します。(虫も窒素が大好き)その結果、自然栽培のお茶と比べ、茶葉が虫害に遭いやすくなり、必然的に農薬を使用せざるをえなくなります。枝を落とすのもお茶の成長を早める方法の1つです。枝を切り落とされたお茶は、若い芽を速い速度で成長させるため、数年後には農家の収量は増えます。

プーアル茶の産地

地面には雑草がほとんど生えてなく、茶葉のサイズが大きいのは肥料栽培の証し

この茶園は茶葉の数が非常に少なく小さいにもかかわらず、茶葉の色は緑色をしている。これは、ごく最近に肥料が施肥されたことを意味している。

有機肥料なら良いというわけではない。窒素を含む肥料は例えそれが家畜の糞であっても、お茶の成長を早め、品質を低下する要因となる。

自然栽培から上記の様な現代農業へとシフトしたお茶は、茶葉が青々とし、サイズが大型化し、また表面にひだが生じます。これはより多くの光を吸収するために茶葉が変化した結果です。成長が早いということは、より多くの光合成が行われます。その結果、茶葉は沢山のクロロフィル(葉緑素)を必要とし、また多くの光を吸収するために茶葉を大型化したり表面にひだを生じることで表面積を増加させます。逆に、自然栽培で肥料を与えずに作られたお茶の場合、成長が遅く、茶葉は光合成をほとんど行わないため、茶葉は全体に黄色く、小さなサイズへと変化します。

プーアル茶の茶園

木の周りのみ掘り起こされ、肥料が添加されている。これは自然栽培とは呼ばない。

自然栽培のお茶はまるで春に採れた山菜のように、濃厚な味わいを特長とします。それと比較すると、現代農業の導入により作られたお茶は、薄い味わいのお茶になります。現代農業のお茶が悪いというわけではないのですが、私は自然栽培のお茶を体験してしまって以来、その味の濃さと味わいの深さにに感動し、以来自然栽培のお茶ばかりを追いかけております。

昔のままの自然栽培の茶園:周りの草木とお茶の木が共存している。

実際、雲南省で作られるプーアル茶の9割以上が自然栽培茶ではなく、現代農業で作られた茶葉を原料として作られます。仮に樹齢1000年を超えるような老木から作られたプーアル茶が入手出来ても、現代農業で作られたお茶は、普通の茶園産のお茶と同じく薄味でコクの薄い味わいとなります。

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