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殆どの人が知らない!カビ臭いプーアル熟茶が生じる「驚きの理由」
- [2021.04.11] Written By 北城 彰(Akira Hojo)
「プーアル熟茶はカビや土のような臭いがするから苦手」という意見をよく聞きます。
確かに、質の低いプーアル熟茶やダイエット目的で売られているようなプーアル茶には独特のかびのような匂いがあります。
私もブルーチーズのような青黴風の匂いがするお茶は過去に何百と体験してますが、基本苦手です。
しかし、実はこの匂い、カビは一切関係してないことをご存じでしょうか?
プーアル熟茶の原料は生のお茶では無くプーアル生茶
熟茶の発酵は生の茶葉では無く、プーアル生茶を原料として用います。
プーアル生茶は床に数十センチの厚さで堆積され、水分を加えた上で発酵が行われます。
発酵は茶葉自体や環境中に存在する微生物により行われます。発酵の初期、アミノ酸や澱粉質などの分解しやすい成分はカビや細菌によって分解され、その後、放線菌と嫌気性の細菌が交互に関わることで更なる発酵行われます。
放線菌や嫌気性の微生物が食べ尽くした後、残った繊維質などは、担子菌というキノコの一種の微生物により分解され、一連の発酵が止まります。
熟茶の発酵についてはまた別のコラムで詳しく説明したいと思います。
東南アジアで人気が高いカビ臭い熟茶
中国系のお茶愛好家の間は、乾燥フルーツのような甘い香りの熟茶は「棗香」と呼ばれるのに対し、いわゆるカビ臭い匂いのするプーアル熟茶は「樟香」と呼ばれます。
HOJOでは甘い香りがする棗香のプーアル熟茶を中心に取り扱っておりますが、東南アジアなどでは樟香のファンが多くおり、いわゆるカビ臭いお茶が非常に受けます。
この理由は、1900年代、東南アジアで入手可能だったプーアル茶の多くがカビ臭いお茶だったことに起因します。子供の頃から樟香のする熟茶になれているという時代背景が関係します。
かび臭さの原因は煙臭い原料
かび臭さの原因ですが、実はこれ、カビの匂いではなく煙の香りです。
え?そんなわけ無いでしょう?と思われるかも知れませんが、煙臭い原料を発酵すると、不思議なことにカビそっくりの匂いへと変化します。
意識すると気がつくと思いますが、カビ臭いプーアル熟茶は、煙で燻された原料を用いているため、強い渋味を呈します。
煙臭い原料が熟茶の生産に用いられる理由
プーアル熟茶はプーアル生茶を原料に微生物発酵で作られるお茶です。このため、生茶を作るよりも遙かに手間暇がかかります。
にもかかわらず、市場では「熟茶は安いお茶」と言うイメージが出来上がっているため、熟茶の生産者は必死に安い原料を探し求めます。
この為、多くのプーアル熟茶、特に有名工場で作られるようなお茶は、その多くが、大規模茶園産のお茶から作られる事が多く、ゆえに、大きな工場製の熟茶は余り質が良くありません。
雨降りに摘まれたお茶
もう一つ、プーアル熟茶の加工業者が比較的質の良い原料を安く仕入れる方法があります。それは、雨が続いた日に収穫された原料を仕入れる事です。
雨が降ると、お茶は急激に成長するため、質が落ちる上に、濡れた茶葉は製茶工程に影響を与え、また、お茶を乾燥することも出来ません。
この理由から雨が続くと、有名産地や老木のお茶であっても、買い手がつかず、文字通り二束三文の値段となります。
かといって、農家では摘まずに放置しておくとお茶はどんどん成長してしまい、収穫ゼロ(収入ゼロ)になるため、農家では雨降りでもお茶を収穫し、自らの手で加工します。(農家は通常、原料茶葉を加工業者に販売して生計を立てており、自ら製茶すること例外的です。)
当然雨降りだと天日乾燥が出来ないため、農家では火を焚いてお茶を乾燥させます。この結果、出来上がったプーアル生茶は、まるでラプサンスーチョン(正山小種)のように煙り臭いお茶になります。
このような原料は買価がとても安いため、熟茶の生産者はこれらの原料を好んで仕入れるわけです。
自然栽培の老木から摘まれたお茶は、雨降りで品質が落ちたとしても、大規模生産の茶園と比べたら遙かに品質が高いため、それらの事実を知っている生産者、特に小さな加工業者は雨降りに加工された生茶を特に好んで入手しようとします。
東南アジアを中心とする一部の市場では、この独特の香りを樟香と称してしてむしろ好むため、上手いこと需要と供給が合致しているのです。
驚くべき事に、近年では樟香のプーアル熟茶の需要が増加しております。これに対応するため、一部の生産者は煙臭くない原料も、燻製室で燻して、意図的に煙の匂いを付けております。
HOJOでは甘い棗香のする熟茶を紹介してます。
HOJOでは乾燥フルーツのような香りがする熟茶を重要視しております。これまでカビ臭い熟茶で苦い経験をされたことが有る人は是非、HOJOのプーアル熟茶を試して戴きたいと思います。
一番コスパが高く、最初にお勧めするのは雲県熟茶2019年です。このお茶は後味が濃く、また、甘い乾燥フルーツ系の甘い香りがし、飲みごたえのあるお茶です。熟茶のカビ臭いイメージが払拭して戴くのにお勧めのお茶です。
雲県熟茶 2019
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