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プーアル茶の餅茶と散茶、どちらを選ぶべき?
- [2021.01.07] Written By 北城 彰(Akira Hojo)
プーアル茶というと、円形の餅茶や四角いブロック状の磚茶、或いは、キノコのような形状のトウチャなど、お餅のような硬い塊に加工されているイメージがあります。しかし、プーアル茶には散茶もあることをご存じでしょうか?雲南省の産地ではプーアル茶と言えばむしろ散茶を指します。HOJOではプーアル茶は散茶と餅茶の両方を販売しております。
本コラムでは同じプーアル茶で、散茶と圧縮されたお茶ではどう違うのか、また、どのような目的に応じて選び分けたら良いのか説明したいと思います。
産地でプーアル茶を仕入れるときは散茶の形態
日本国内は勿論ですが、昆明や広州、上海などのお茶市場でプーアル茶を購入しようとした場合、多くのお茶は既に円形や長方形の塊に圧縮されております。
しかしながら、産地の生産者からお茶を仕入れる際は、基本、散茶(毛茶)で仕入れるのが一般的です。HOJOではプーアル生茶も熟茶も、雲南省の各産地の1次生産者から直接仕入れており、散茶で購入しております。
仕入れたお茶は散茶で売ることも出来るし、餅茶等に加工することも出来ます。餅茶に加工したい場合、散茶を緊圧職人の工場へと持ち込み、各種生産条件を指定し、それぞれの形状・サイズへと加工を行います。
緊圧茶は水蒸気を通すことで加工
緊圧をする際は、散茶(毛茶)に蒸気を通し、お茶をやわらかくします。熱と湿度でやわらかくなったお茶は、布の型に入れられ、加圧する事で成形されます。こうして出来上がった餅茶等はその後数日〜1週間かけて自然乾燥されます。ただし、蒸気を加える際に、熱が加わり、味香りの点で影響を少なからず受けます。また、緊圧直後の餅茶は水分を吸っておりますが、乾燥に数日の時間がかかり、それによる香りや味の変化が起こります。緊圧の際にかかる熱と水分ゆえに、餅茶を散茶とは違うの個性を呈します。
以下に、散茶と緊圧茶のそれぞれのメリットデメリットを説明したいと思います。
散茶のメリットとデメリット
散茶は作りたてのお茶です。熱や水分によるダメージが少ない為、花のような新鮮な香りが感じられます。
味がより豊に感じられ、舌触りが滑らかで、雑味が少ない点も散茶のメリットです。
また、圧縮されてないため、餅茶をほぐす手間がいらず、手軽に飲むことが出来る点もメリットです。
デメリットは嵩張る点です。非常に嵩張るため、保管場所を取ります。
また、嵩張る=散茶は空気に触れる面積が多く、有酸素下で経年熟成させた際、劣化と熟成が同時進行し、あまり理想的な熟成(甘い香りの形成)をしません。
HOJOではこの問題を解決するために、無酸素包装をしております。この為、袋を開封しない限り散茶でも理想的な熟成をします。
茶葉由来の新鮮な花や柑橘系の香り、萎凋による甘い香りがより感じやすいという点で、散茶はとても親しみやすいお茶です。プーアル生茶を初めて飲まれる方には散茶がお勧めです。
かといって、散茶は初心者の為のお茶というわけではありません。香りの個性がしっかりしており、同じお茶の場合、餅茶よりも味が良いため、プロの間でも散茶は好んで飲まれます。
餅茶のメリットとデメリット
餅茶は圧縮されているために持ち運びが容易であり、熟成のために沢山保存したい場合も保管場所がコンパクトで済みます。
プーアル茶の熟成と劣化は紙一重です。酸素に触れているお茶は劣化と熟成が同時進行するのに対し、無酸素で保存されているお茶は熟成のみが選択的に進みます。
餅茶は圧縮によって餅茶内部が無酸素状態となっているため、有酸素下で保存しても内部が劣化しにくいというメリットがあります。ただし、HOJOでは散茶も餅茶も無酸素包装しているため、散茶も餅茶の両形態ともに理想的な熟成をします。
中国、台湾、東南アジアでは有酸素保存が一般的ですが、このような保存方法の場合、餅茶は散茶よりも理想的な熟成をします。ただし、圧縮を固めにしていることが前提となります。圧縮を弱めの圧力で行った場合、酸素が内部に入り込み、劣化が進みやすくなります。詳しくは以下のコラムをご参照ください。
https://hojotea.com/jp/posts-887/
餅茶の場合、圧縮によって茶葉同士が近接しており、互いの茶葉から生じたエキスが混ざり合うため、成分間の反応が起こりやすく、熟成が多少早く進みます。
緊圧をする際に蒸気を通すことで茶葉が加熱されます。その結果、味がシャープになり、口に含んだときの液体の豊かさが散茶よりも軽減します。
ただし、加熱工程による影響は表裏一体です。蒸気で茶葉が加熱されると、それによって味のトーンが上がり、透明感が増すため、この味わいを好む人もおります。
また、熱処理により茶葉の酸化臭が軽減します。ちょうど、少しヒネ臭がする海苔を火で炙るのと同じ原理です。微酸化したお茶や、製茶工程に微妙な問題があるお茶は、散茶で飲むと問題が気になりますが、餅茶に加工するとスッキリとした味わいになり、細かな問題は気にならなくなります。
緊圧後の餅茶は、数日間かけて乾燥されます。乾燥に時間がかかるため、この間に香りがマイルドになり、揮発性の高いトーンの香り(トップノート)は失われます。
基本、餅茶は熟成向きです。経年熟成によって形成されるお茶の熟成香(蜂蜜、黒糖、乾燥フルーツのような香り)を楽しみたい場合は餅茶をおすすめします。
HOJOでも5年以上熟成した餅茶なども取り扱っております。散茶も長期熟成をすることは可能ですが、非常に場所を取るため、長期熟成をする場合餅茶が一般的です。
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