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- お茶の品質を決める各種要素
老木から作られたプーアル茶は何が凄いのか?
- [2016.04.15] Written By 北城 彰(Akira Hojo)
近年プーアル茶愛好家の間で老木から作られたプーアル茶がブームになっております。実際に中国で販売されているプーアル茶で「老木」という文字がないお茶は殆ど見あたらない程、殆どのお茶が老木から作られたという謳い文句と共に販売されております。実際に雲南省へ行けば分かる事ですが、「老木」はそう沢山ありません。市場で老木を謳っているいるお茶の殆どは、老木から作られてないというのは雲南省のお茶関係者の間では常識です。本当に老木から摘まれたお茶を入手するには、農家及び一次加工業者と取引し、原料の茶葉から管理する他ありません。
単株プーアル茶
私は仕事柄、単株プーアル茶と言って、特定の木のみから作られたお茶を飲む機会が頻繁にあります。単株プーアル茶はちょうど、鳳凰単叢烏龍茶と同じで、1本の木から作られたお茶を意味する言葉です。「単叢」という言葉が潮州で使われるのに対し、雲南省では「単株」という言葉が一般的に用いられます。多くの場合、単株プーアル茶が作られるのは、①家族及び親族が飲むためか、②老木の品質・個性を勉強するために実験的に作られる事が一般的です。私は仕事柄、単株プーアル茶は割と頻繁に飲む機会があります。そこで私が単株プーアルを飲んだ経験から理解した老木の特徴を紹介したいともいます。
果たして、老木の木から作られたお茶は美味しいのでしょうか?
老木になる事で強くなるのは後味(余韻・コク)の強さです。老木から作られたお茶の場合、老木だからと言って、香りが強くなるわけではなく、味が非常にやわらかくなり、余韻が長く続きます。余韻が長くなると言うことは、香りに関しても奥行きが生じることから、鼻や口元で感じることが出来る香りはむしろ弱まります。中国では「茶気」という言葉がありますが、これこそまさに「韻」の深さ、つまり「余韻」を指す言葉です。ただ、多くの人が、ボディ(ふくよかさ)を茶気と勘違いしている傾向があります。ボディに関しては、木の樹齢とは関係無く、土壌とお茶の木の種類(品種)で決まります。一般に、老木の横に若い木があった場合、両方の木から採れたお茶は同じようなボディを示します。
余韻の強弱は誰にも理解できるわけではない
実際、数割の人は後味(余韻)という感覚が全く分かりません。また、残り数割の人は、比較すると分かるものの、いきなり飲んだ場合、余韻の強弱が判断できません。音楽の絶対音感と同じで、飲んだ瞬間に余韻の強さが分かる人はごく少数です。折角の老木の特徴も高価な楽器と同じで、誰にもその凄さが理解できるわけではありません。ただし、余韻の深さを理解する能力はトレーニングによって多少改善されます。残念ながら、遺伝がゆえか、幾らトレーニングをしても全く余韻が分からない人もおります。
老木は品質要素の1つに過ぎない
ただし、老木の余韻(茶気)が強いというのは、その他の栽培条件が全て同じであることが前提となります。最近では老木のお茶が高く売れることから、肥料を与えたり、地面の草を全て除いてしまったり、剪定をすることで成長速度を速めたりと、農家が過度に世話をする傾向があります。このような老木は、自然栽培の若い木よりもはるかに弱い余韻となります。有名地域にある老木の殆どがこのような状況です。逆に、老木でなくとも、無肥料・無剪定のまま、周りの生態系と調和しているようなお茶は、驚くほど深い余韻のお茶になります。老木かどうかと言うのは、多くの品質要素の1つに過ぎず、それに振り回されるべきではありません。むしろ、余韻が正確に感じられるように自分の感覚を磨き、良いお茶を飲んだときにその良さを理解できるようになることが重要だと思います。
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