東方美人2016が全体に不作な理由 | お茶の専門店HOJO

今年は台湾全体に東方美人の出来が悪い年でした。台湾にて複数の見本を評価しましたが、最終的に今年は東方美人を仕入れないことに決定しました。

雨続きだった東方美人の収穫期

東方美人が収穫されるのは6月です。この時期になると、ウンカ(正式名称：チャノミドリヒメヨコバイ）が多く発生し、お茶の葉の汁を吸います。ウンカの攻撃を受けたお茶は、テルペンと呼ばれる物質を生合成することで、これ以上虫を寄せ付けないように対抗します。このように植物が害虫や微生物に対抗して作り出す防御物質(人で言う抗体のような）をファイトアレキシンと呼びます。不思議なことにテルペンを含むお茶を発酵すると果物の香りのような甘い香りへと変化します。実は、この香り成分は果物に含まれる香気物質と類似しております。このような機構により、東方美人の蜜やマスカットのような甘い香りが形成されます。
ところが、今年の6月は台湾では雨が断続的に降り続きました。雨が降り続くと、虫は減り、また、お茶の成長速度が速くなります。この結果、今年の東方美人は香りが弱く、また、味わい的にも薄いお茶になりました。

今年は仕入を断念

私は台湾で評価したお茶に加え、日本に戻ってからも、複数のサンプルを評価しましたが、今ひとつ納得できる品質が無く、最終的に今年は仕入をしないことにしました。昨年仕入れたお茶は質的にも非常に良く、既に1年間熟成しているため、仕入れた当時よりも甘い香りが強くなっております。今年は昨年のお茶の在庫で何とか切り抜ける予定です。
逆に蜜香梨山茶や蜜香黄金芽については、収穫時期の5月に雨が少なかったため、非常に良い品質でした。
東方美人を始め、蜜香系のお茶は年によっての品質が非常に不安定ゆえ、今後、品質が優れている年にはまとめて仕入をしようと思ってます。

著者・文責：北城 彰（Author：Akira Hojo）株式会社HOJO代表（CEO）

お茶の専門家として、中国、台湾、インド、日本のお茶を仕入れ、自社ブランドにて日本国内及び世界に販売。年間3ヶ月は中国台湾の現地に滞在し、生産管理、仕入れに従事。マレーシアの首都クアラルンプールThe Gardens Mallにて直営店HOJO Tea SDN BHDを運営中。

静岡県立大学大学院　食品栄養科学 修士（Master of Food and Nutritional Sciences）

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