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- お茶の品質を決める各種要素
お茶産地における食材とお茶の品質の関係
- [2016.04.05] Written By 北城 彰(Akira Hojo)
雲南省でのお茶の仕入は3-4週間に及ぶため、この期間中、私は様々な場所での食事をする機会に恵まれます。良いお茶を求めて各地を訪問するわけですが、面白い事に、それぞれの地域のお茶の品質は、それらの地域でいただく食事の質と比例しております。
雲南省の料理
雲南省の料理は、ミャンマー、四川、タイ料理の影響を強く受けており、様々なスパイスを豊富に使用した香り・辛みの強い食事です。タイ料理と四川料理が融合したような料理で、日本人には非常に美味しく感じられる料理だと思います。私はお茶の仕入で様々な土地へと出張しますが、様々な中華料理の中でも雲南省の料理は突出して私が好きな料理です。雲南省の料理の特徴は、土地で採れた野菜を豊富に使用することです。その季節の野菜が使われ、料理主体で使う材料が決まるのではなく、材料主体で料理が決まる点が興味深いです。特に、雲南省では山菜をはじめとする、野生の食材が非常に珍重され、3-4月のお茶の仕入シーズンには天然の山菜が豊富に食されます。
雲南省の料理は都市部と田舎では味が劇的に異なる
基本的に昆明のような雲南省の都市部でも山奥の少数民族の村でも、料理の内容は似ております。ただし、食材の質の違いに関しては、都市部と田舎とでは劇的に差があります。昆明をはじめとする都市部では、グルタミン酸ナトリウムが非常に普及しており、その土地の伝統的な味わいが失われつつあります。逆に、雲南省の中でも山間部などの僻地に行くと、化学調味料が使われず、また、自然栽培の食材が普通に手に入ります。雲南省における料理は食材の質が大変重要視されており、その点では日本食との共通点か感じられます。都市部と田舎との味の差は、レシピや料理の腕以上に素材の質が影響します。
地域ごとに異なる自然栽培への理解度
お茶の仕入先では家庭料理をいただく機会に恵まれます。お茶を評価しつつ、その村々での料理をいただいていると、お茶の質と、同地域で料理に用いられる食材の質が類似している事に気がつきます。因みに、味の濃さとは、余韻の深さのことであり、味の奥行き、後味などを指す言葉です。これには村周辺地域の土壌や土地の標高なども関係しておりますが、最大の理由は、自然栽培に対する村人の価値観だと思います。
私がお茶を仕入れている地域の多くは雲南省の南西部の山間部の標高2000m付近の村です。これらの村で村人と話をしていて驚くのは、村人の多くが「無肥料栽培による自然栽培の農作物の質が良い」という点を非常によく理解しております。日本をはじめとする先進国では、質の良い作物と言うと、猫も杓子も「有機栽培」の農作物を想像しがちです。しかし、これら山間部の村では、もともと化学肥料などは存在せず、有機栽培は当たり前です。実際、有機栽培であっても、肥料を与えたえて栽培されたお茶は非常に早く成長し、余韻の浅い味へと変わります。農村部の人々は、このような事実を野菜や果物の味や香りを通じて体感的に理解しており、ある意味彼らの間では無肥料の自然栽培食品が美味しいという知識は特別な知識ではなく、むしろ一般常識となっております。当然、お茶に対しても、同じ意識を持っており、このような意識が共有されてる地域は、村全体を通じて平均して非常に質の高いお茶が作られます。私の経験的に、雲南省南部に代表されるような、お茶の値段が高騰している有名地域へと行くと、同じ少数民族でも農業(農作物)に対する価値観が全く異なります。布朗山、武易、老班章を初めとする有名地域の場合、無肥料栽培のお茶は極めて希であり、これらの地域では肥料の有無ではなく、化学肥料か有機肥料と言う点が重要視されております。ある意味、値段高騰に伴い、産地が観光地化し、その結果農作物に他する価値観が先進国化しているように思います。
味が非常に濃い米
余談になりますが、日本人の多くは日本の米は世界一だと思っていると思います。実は雲南省にも物凄い米があります。私が衝撃を受けたのは雲南省の高地にある村で食べた完全無肥料の自然栽培の米です。無肥料の米は、味に深みがあり、非常にまろやかで、味が濃く、私は初めて食べたときには心の底から感動しました。品種改良が進んでいる日本の米の場合、食感などに関しては非常に優れておりますが、客観的に「味の濃さ」に関して評価した場合、雲南省の山間部で作られる米は非常に突出していると思います。
全く臭み・癖がない山羊肉
育て方で味が変わるのは、植物だけではありません。日本の場合、例えば高級な鶏肉と言えば、「地鶏」を想像する人が多いかと思います。中国語では地鶏のことを「土鶏」と言いますが、雲南省の少数民族の村に行くと、一番、質が高い鶏肉は、放し飼いで、「エサを一切与えてない鶏」を指します。日本の一般的な地鶏のように放し飼いでも飼料で育った鶏は、雲南の現地では本当の意味での土鶏ではなく、2-3級品として認識されます。飼料を与えず、野に放置し、鶏自らにエサを探させる完全放置方式の鶏は、鶏独特の臭みが一切無く、一般にあっさりイメージの鶏肉とは思えないほどに深い味わいがします。また、先日、無飼料の自然放牧方式で育った山羊肉をいただきました。山羊肉というと、マトンと同じく独特の臭いがするのが一般的です。ところが、飼料を与えず、野の草だけで育った山羊には「山羊の臭い」が全くしないのです。おそらく、山羊肉と言われなかったら何の肉か分からないと思います。同じく先日、無飼料・自然放牧方式で育った牛のレバーをいただきました。レバーには独特の臭いがあるため、苦手な人も多いと思います。ところが、食べてみて心の底から驚きました。なんと、レバーなのにレバーの臭いがしないのです。食感は確かにレバーなのですが、レバー独特の臭いが全くなく、味が濃く、幾らでも食べられると思いました。肉が臭うというのは、実は動物が原因ではなく、食べ物が原因と言う点に気がつき、深く納得しました。私達人間も同じで、良い食材がよい体を作るのだと思います。
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