鳳凰烏龍茶が老木から作られるとこれまで紹介してきましたが、全てのお茶が老木から作られるわけではありません。
老木から作られるお茶は、全体の数パーセントにしか過ぎず、残りは、鳳凰山の麓の茶園や、鳳凰山以外の地域で作られたお茶から作られます。
老木から作られたお茶と、そうでないお茶は飲めばその違いは飲めば明確に分かります。老木から作られたお茶の場合、非常に強い喉越しが感じられ、お茶を飲んだ際、口元だけでなく喉の奥で味を感じることが出来ます。香りに関しても、鼻から抜ける軽い香りではなく、質量があり喉の深い位置で香りが感じられます。通常老木でなくとも、高山で作られたお茶は、喉越しが強くなる傾向にありますが、鳳凰山の場合、高山帯(1000-1400m)は老木で占められており、若いお茶の木は殆ど存在しません。宋の時代に、山の高い場所に優先的にお茶の木が植えられた事から、老木=高山、若い木=低地という位置関係にあります。
もう一点、鳳凰山のお茶は特徴的な方法で作られます。
前回のブログで、鳳凰山のお茶は「完全放置栽培」と説明しましたが、実は「放置栽培」なのはお茶だけではありません。
お茶の木の周りに生えている、「山の木」も放置されております。1400mと言えば、美ヶ原や霧ヶ峰高原のように高原地帯であり、各種の灌木が自生しております。
当然これらの灌木を切り落とした方が、お茶の木からすると、「快適」になるわけですが、鳳凰山ではこれら雑木を決して切り落としたりしません。
実はこれには重要な理由があります。
自然に自生している木は、お茶と同様に老木化しておりミネラルの吸収能が高く、葉には高濃度のミネラルが含まれます。
これらの葉が落葉した際、葉は微生物により分解されますが、含まれていたミネラルは、お茶の木によって吸収されます。
つまり、周辺にある自然の木は、お茶に木にミネラルを与える役割をしております。中国では、自然の木を茶園に自生させるという技術は古くから用いられており、本技術は、プーアル茶君山銀針龍井茶、碧螺春の茶園でも見られます。但し、雑草・雑木に一切手を入れずに、完全放置しているのは、私がこれまで見た中では、鳳凰山と雲南省のプーアルくらいです。
この考え方は、玉露の作り方にも通じます。玉露でも、本玉露と呼ばれる玉露の場合、プラスチック製の寒冷紗ではなく、藁で被覆が行われます。
藁には豊かなミネラルが含まれているため、雨が降ると、ミネラル分が地面に流れ落ち、それが玉露の木によって再吸収されます。
このため、本玉露の美味しさは、寒冷紗で被覆した一般的な玉露とは比較になりません。私の父(リンゴ農家)曰く、藁をりんご園の地面(木の回り)に敷き詰めると、リンゴの味が改善されるそうです。
リンゴの場合、藁以外にもリンゴの木の周辺に生えた雑草を刈り取り、木の回りに敷き詰めることで、リンゴのミネラル分を高めるという技術が用いられます。因みに、冬期に地面をトラクターで起こしてしまった場合、雑草の根が死んでしまうため、翌年に生えてくる雑草に含まれるミネラル分は少なくなります。ふと思ったのですが、山の落ち葉を集めてきてリンゴの木の回りに敷きつめたら、更に美味しい味になるかもしれません。非常に興味深いテーマです。
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中心にある大きな木はお茶の木です。木の周りは、笹や灌木で覆われており、望遠レンズで撮影するのがやっとでした。
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本写真は未だ植えられて10年と経っていない若いお茶の木です。お茶の木が覆われてしまうほどに雑草が生えております。但し、このような環境が素晴らしいお茶を生み出します。勿論、言うまでもなく有機栽培です。

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