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プーアル茶とはどのようなお茶なのでしょう?
どのような種類があり、何を持って良い品質とするでしょう?
また、どのような飲み方が最適なのでしょうか?
私は雲南省を毎年訪れ高山の少数民族の村に滞在してお茶の買い付けを行います。以下、現地で学んで見識を紹介しつつ、プーアル茶に関する疑問に答えていきたいと思います。
先ず、プーアル茶とは雲南省の南部にある西双版納州と普洱市、臨倉市と呼ばれる地域で大昔から作られておりました。プーアル茶を理解するには雲南省とその周辺の地域の歴史を簡単に理解する必要があります。
中国南部に位置する雲南省は、昔から中国だったわけではありません。実際に中国の一部となったのは明の時代であり、それまではモンゴル民族やタイ系の民族を含む様々な民族により複数の小国が作られ統治されておりました。この為、現在における国境線は当時の国境線とは異なりました。当然、プーアル茶は実際には雲南省だけでなく、その周辺諸国でもその昔から生産されており、それは現在に至っても同様です。実際に、ベトナム、ミャンマー、ラオスでも、樹齢が数百年から千年を超えるようなお茶の木があり、プーアル茶が生産されているのも事実です。私も、国境に近い地域に行くと、ラオス産やミャンマー産のプーアル茶を頂く事があります。
プーアル茶は歴史的に中国本土の漢民族には受け入れられず、少数民族が自分たちで飲むか、チベット、ミャンマー、モンゴル、東南アジアへと輸出され、馬や他の食料と交換するための交易品としての役割を果たしておりました。
西双版納はベトナムやラオスと国境を隔てており、雲南省の最南端に位置する州です。ここで生産されたお茶の多くは北上し、プーアルという町に集積されました。この交易に用いられたルートは「茶馬古道」と呼ばれ、現在では第2のシルクロードとも呼ばれております。
このことから、雲南省で生産されるお茶がプーアル茶と呼ばれるようになりました。プーアル茶は広東語ではポーレイ茶とも呼ばれます。プーアル茶とポーレイ茶は同じ種類のお茶を指します。
茶馬古道の起点となった易武の村 | 茶馬古道にて会話を楽しんでいる少数民族。 |
歴史的に見てプーアル茶は中国漢民族の間では殆ど飲まれず、少数民族が飲んでいるエスニカルなお茶というのが従来の中国での評価でした。勿論、中国の歴代皇帝もプーアル茶を飲んでおりませんでした。
ところが、ここ10年内、広東省、香港、台湾のマニアを中心に急速にプーアル茶ブームが到来しました。これによりプーアル茶の価格は高騰し、市場には膨大な量の粗悪品が流通しました。このブームは2007-2008年にピークを迎え、その後衰退しつつあります。東南アジアをはじめとする中国系のビジネスマンは、プーアル茶を熱帯雨林気候下で保存することで、熟成により価値が向上し、将来高い値段で売れると真剣に信じ、個人で何億という金額をお茶に投下しているのも珍しくありません。
2008年になるとブームは下火になり、過剰な在庫が原因で倒産するお茶会社が続出しました。現在、値段は年々下降傾向にあり、また、粗悪品が徐々に淘汰され始めたことから、良いプーアル茶を入手するには良い環境になりつつあります。非常に良い状況になってきたため、HOJOでも高品質のお茶に絞り、本格的にプーアル茶を販売することに致しました。
プーアル茶は全く異なる2種類のお茶から構成されております。それらは「生茶」と「熟茶」と呼ばれます。何百年も昔から作り続けられているお茶は生茶です。また、コレクターや投資家が血眼になって集めているお茶も生茶です。
生茶は基本的に緑茶と同じ流れで作られますが、殺青とその後の乾燥方法が緑茶のそれとは異なります。
茶葉は緑茶のように芽や1芯2葉だけではなく、烏龍茶と同じく1つの芽に対し、2~3枚の葉を付けて摘み取ります。2−3枚目の葉は長い間木についていた事から、ミネラルやカテキンなどのポリフェノールが豊富に含まれており、良い香りと後味を出すためにも欠くことが出来ません。逆に芽の部分ばかりから作られたプーアル茶は、芽に含まれるアミノ酸が多すぎることからメーラード反応が促進し、熟成をした際に良い香りが出ません。
シルバーニードルのような芽が非常に多く含まれるプーアル茶を見かけますが、これは白茶を意図的に混ぜ込み、見た目を改善したタイプです。本来のプーアル茶は超高級品質でも、芽の量は多くありません。
収穫された茶葉は殺青と言って、釜で炒ることで酵素を失活させます。
釜炒り茶は日本の緑茶のように蒸気で急激に熱をかける訳ではないため、実際には酵素の一部は失活せず茶葉内で生きております。この点は中国緑茶の生産でも同じですが、緑茶の場合、この後に熱風を当てることで残存している酵素を完全に失活し、酵素による発酵が起こらないようにします。プーアル茶の場合、意図的に30%
程度の酵素を残し、これらの残存した酵素の存在は良いプーアル茶を作る上で非常に重要です。
プーアル生茶は太陽光で乾燥されます。太陽の場合、温度が上昇しないため、茶葉内に残存している酵素により茶葉は徐々に発酵をします。この点がプーアル生茶と緑茶との大きな違いです。従って、プーアル生茶はどちらかというと、半発酵茶に近く、黄茶とも製法が似ております。
殺青後の茶葉を天日乾燥している農民 | プーアル茶はグレードに関係なく、天日干しで乾燥します。一般的に竹の笊に広げ、庭先に並べられます。 |
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茶葉を天日乾燥している傣族の農民 | プーアル茶の場合部分発酵が進むため、非常にカラフルな色合いをしております。 |
プーアル生茶の新鮮な茶葉は緑茶と同じく緑色をしております。但し、保存期間が長くなるにつれて、茶葉の色は徐々に褐変し、茶色へと変わっていきます。実際には5年ほどで黄~琥珀色に変わり、10年ほどで茶色へと変化します。
生茶の味は新鮮な内は緑茶に近く、熟成と共に白茶に近くなり、更に熟成が進むと烏龍茶、そして紅茶やプーアル熟茶に近い味へと変化していきます。年々異なる味が楽しめることはプーアル茶を飲むことの楽しみの一つであり、保存の仕方によっても品質は変わります。(保存法については後で詳しく説明します。)
プーアル生茶の茶葉 | プーアル生茶の茶殻。プーアル生茶は緑茶や烏龍茶と同じような外観です。 |
数百年以上の長い歴史を持つ生茶に対し、熟茶は1973-4年に開発されました。生茶の茶葉を原料にカビで発酵する方法が、湖南省の茯磚茶などのような黒茶の製法を参考にして開発されました。生茶として、既に完成品となった茶葉はカビによる発酵をすることで急速に熟成されます。れにより、短期間の間にお茶はまるで20年位寝かせた生茶のように完全発酵をします。 茶葉は黒~茶色へと変色し、お茶は深い茶色~赤の色を呈し、マイルドな口当たりと深いボディが特徴のお茶です。 日本で主に流通しているお茶は、その殆どが熟茶です。市場では熟茶の方が概して安価であり、高級な原料になるほど生茶の生産に用いられます。熟茶はどちらかというと、初心者用として、そして生茶はマニアやコレクター向けに販売されます。
尚、熟茶ですが、経年は品質と関係ありません。熟茶の場合、生茶程年月の経過が香りや味に影響を与えません。品質は原料となる茶葉とカビによる発酵で決まります。但し、熟成をすることで、乾燥フルーツのような甘い香りは増し、下で感じられる甘みが増します。
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プーアル茶に限らず、お茶の品質は、喉越しの深さで決まります。
日本語における喉越しという言葉は、非常に曖昧で理解しにくいですが、言い換えるならば「余韻」或いは「こく」と言う言葉が適切かと思われます。お茶を飲んだ際に、低品質のお茶は香りが強く、それでいて後に残りません。良いお茶は、喉の奥までグッと入り、香りも甘みも長く持続します。この感覚を中国語では「喉韻」という言葉であわします。中国でお茶を買い付ける際、この喉韻が分からない人は本当のプロとして認めてもらえません。
お茶だけに限らず、美味しい食品、果物、野菜、ワイン、酒、そしてジュースの全てを喉韻と言う表現で説明することが出来ます。美味しいリンゴジュースと、あまり美味しくないリンゴジュースを比較してみてください。
何が違うのでしょう?
甘さでしょうか?
美味しくないリンゴジュースに砂糖を加えたら、美味しくなるのでしょうか?
或いは、香りでしょうか?
美味しいくないリンゴジュースに同じ香りを付けたら美味しくなるのでしょうか?
実は、全ての食品に共通していえるのが、美味しい食品には強い喉韻が感じられます。お茶・食品の香りは2次元的な、そして喉韻は奥行き、つまり3次元的な味の奥行きを演出します。
お茶の品質は喉韻できまり、値段は喉韻の強度に比例して高くなります。つまり、喉韻が何か分かっていない場合、品質と値段の関係がよく分かりません。
因みに、喉韻の強度は原料の質で決まります。唯一の例外は熟茶です。熟茶の場合、発酵によりpHが変化します。カビは発酵すると有機酸を放出するからです。pHが変化した場合イオン濃度が変化します。このため、熟茶に関してのみ、発酵前と後で喉韻の強度が異なります。因みに、紅茶の発酵の場合、微生物が関与しておりません。このため喉韻の強度は発酵前と後では全く同じです。
プーアル茶を選ぶ際、どのような要素が強い喉韻を生み出すのか理解することが重要です。喉韻は特定のミネラルの量により決まります。例えば鉄イオンなどが多く含まれている場合、より美味しくなります。つまり、特定のミネラルを多く含んでいればいるほど、喉韻の強度が増します。言い換えれば、鉄を中心とするミネラルをより多く含んでいるお茶ほど、高品質と定義することが出来ます。
どうすれば、ミネラルの豊富なお茶を選び出せるのでしょうか?この答えをどれだけ知っているかが、私のようなプロの質を決めます。お茶の産地は何千とあるわけなので、ただ闇雲に試飲をしていても良いお茶には出会えません。ある程度、目星を付け、求める茶葉原料を作り出す環境を絞り込まねばなりません。プーアル茶の場合以下の要素により喉韻の強度が影響を受けます。
プーアル茶に限らず、高い標高は良いお茶を生み出します。
高い標高の場合、昼間は強い日差しを吸収し、一方夜になると温度が一気に下がるため、お茶の木の代謝活動が遅くなり香りや味に寄与する成分が消費されず茶葉内に蓄積されます。
雲南省南西部、无量山中央部付近:雲南省は山奥に至るまで農民が住んでおり、その多くは高山少数民族により構成されております。 | 雲南省西部の北无量山の景色:2000-4000m級の山々が連なっており、亜高山性の気候です。下に見えるのはメコン川の源流です。 |
プーアル茶の産地はベトナム、ラオス、ミャンマーと国境を隔てており、場所によっては熱帯雨林性の気候の場所もあります。仮に標高が同じでも、緯度が南に行くほど、夜の温度は高くなります。従って、一般論として、緯度は高めの方が良いお茶が出来ます。一方、緯度が高すぎても、昼間の温度が低すぎて良いお茶は出来ません。基本的には雲南省西部から南西部にかけて走る无量山脈が緯度と標高のバランスが取れており、良いお茶を生み出します。但し、南部西双版納の老版章や布朗山は例外的に良いお茶が作られております。
下の写真にもありますが、无量山系(雲南省南西部)では、昼間の気温は30℃近くまで上昇するのに対して、夜になるとその気温は3℃くらいまで下がります。この極端な昼夜の温度差が優れた品質のお茶を生み出します。
雲南省南部の四双版納州の町中の風景:ベトナムやラオスと国境を接しており、亜熱帯の過ごしやすい気候です。 | 雲南省南西部无量山の景色:生態系も南部とは明らかに異なり、針葉樹が多く見られます。この辺は松茸の産地でもあります。 |
樹齢はプーアル茶を選ぶ上で重要な品質要素となります。
木の年齢が古いほど根の全長は長くなります。長いと言うことは、より表面積が大きいことを意味しており、ミネラルの吸収能力が増します。プーアル茶を生産するお茶は3つのタイプに分けられます。
1. 最初のタイプは「茶園産」。文字通り、茶園で作られるお茶を指しております。多くの熟茶は茶園産の茶葉から作られます。また、一般に国内で見られるプーアル茶の多くが茶園産です。茶園産を否定するわけではありませんが、概して喉韻の強度は強くありません。
2. 次に、喬木と呼ばれるカテゴリーがあります。これは山の斜面にランダムに植えられている人の背丈程度の木で齢100-300年の木を指します。喬木でも標高が高い場所産の場合、中の上程度の喉韻を示します。
喬木と呼ばれる樹齢100-200年のお茶の木。全長は2m以上あります。 | 背丈ほどの喬木で茶摘みをする布朗族の女性 |
3. 最高の品質を生み出すのは、老樹とか古樹と呼ばれるグループで、樹齢300-1000年程度の木を指します。これらの木は非常に巨大化しており、木の胴回りだけでも大人の体ほどもあります。茶摘み=木登りを意味しており、高い所へ登って茶摘みが行われます。喬木以上の老木は山の中に生えているため、基本的には山菜と同じく無農薬です。山のお茶の周りには野生の木も沢山生えており、それらの木から落下した葉からはミネラルが土壌に溶出するため、茶園産の茶葉と比べると極めて喉韻の強いお茶が出来ます。
樹齢800-1000年のお茶の木で茶摘みをする農民 |
樹齢数百年のお茶の木 |
上の画像↑をクリックすると拡大します。
最後のカテゴリーが「野生樹」です。これは昔から山に生えていた天然のお茶を指します。プーアル茶の店や、インターネットで検索すると「野生プーアル」という文字を強調した名称をよく見かけますが、これらの多くは野生ではありません。野生の木は非常に限られており、実際には野生と書いてあるお茶の殆どが、人工的に作られた老木や喬木から作られます。
野生樹ですが、雲南省の南西部に多く分布しており、特に无量山や哀牢山の標高2000m以上の地点に多く見られます。野生樹と一言に言っても、複雑交配により生じた様々な種類のお茶により構成されるため、お茶の葉のサイズを初め、茶葉の形状、色、味香り全てにおいて均一ではありません。概して、野生樹は非常に強い喉越しが感じられるのですが、様々な種類の木から収穫された原料をランダムに混ぜ合わせた場合、一概に美味しいとは限りません。組み合わせにより、含まれるミネラルの組み合わせも異なるため、味香りが影響を受けます。
下に掲載しているのアルバムは、私が无量山中の野生茶を探索した際に撮影した写真です。ガイドがGPSを携帯し、2000mを超える亜高山帯までトレッキングを行いました。
良いプーアル茶を入手しようと思った場合、少数民族が所有する山から原料茶葉を入手する必要があります。中国人の政治経済の中心を占めるのは漢民族です。日本人の多くもこの漢民族をその祖先に持ちます。漢民族は、概して勤勉でビジネスのセンスが優れております。これに対し、雲南省の少数民族は、タイ人、ラオス人、ミャンマー人、ベトナム人と類似の民族により構成されており、一般的に東南アジア気質であり、概してのんびり屋さんです。
このことがどのようにお茶と関係があるかというと、昔から有名な山などは、その殆どが漢民族により占有されております。漢民族は、生産量を増やすために、肥料や、消毒をし、茶葉の成長速度を向上します。古樹は若い木と比べると成長速度が遅く、必然的に収量は若い木に劣ります。ところが、木の幹を途中から切る事で、老樹は若い枝を作り出します。これら若い枝は速く上に向かって伸びるため、老樹でありながら、若い木並の収量を確保することが出来ます。ところが、このように成長速度が速くなった老樹から作られたお茶は、老樹の味を維持しておりません。若い木と同じように速く伸びることから、若い木と同じような品質に変化してしまいます。
途中から切られた老木:漢民族の居住エリアではこのような木が多く見られます。昔から有名な四双版納の易武をはじめとする6つの山などは、完全に漢民族により農業経営が行われており、名前こそ有名ですが、良い品質のお茶にで合うのは希です。 |
同じく、途中から意図的に切られた老木 |
一方、少数民族により占められている地域のお茶は完全放置に徹しられており、お茶の木も山の木も大差のない状況です。お茶の老樹は、山の中に生えており、その周りには様々な雑木や草が茂っております。山菜と全く同じ感覚であるため、農薬も肥料も全く与えません。このことは少数民族の民族性だけでなく、少数民族は経済的にも貧しいため、農薬や肥料にお金をかける余裕がないようです。私達は、少数民族により占められている山を選び、また、木の状態を確認した上でお茶の購入をしております。
老木から茶摘みをする傣族の若い女性 | 老木に登り茶摘みをする傣族の男性 |
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お茶の木が生えている山はジャングルそのもの | 突然雨が降ってきたため、雨宿りをさせて頂いた傣族の家 |
お茶の質は早い時期に摘まれたお茶ほどよく、摘んだ後に生えてくる2番茶、3番茶の質は1番茶には劣ります。これは割と常識的な話で、タラの芽のような山菜でも、最初に出てくる芽が美味しく、2番目、3番目の芽は味が劣ります。
実はお茶摘みにはもう一つ大きな秘密があります。
前年度に何回もお茶が摘まれた木は、翌年余りよいお茶を生み出しません。春に一度だけ摘まれたお茶の場合、その翌年までの1年間しっかりと時間をかけ、十分な量のミネラルを樹内に蓄積することが出来ます。反面、春に摘み、晩春に摘み、夏に摘み、秋に摘みと、幾度となく茶摘みが繰り返された場合、お茶の木は次から次へとミネラルを供給しなければならなくなります。このため、冬になっても、よく春に出てくる新芽に供給する為の十分なミネラルが備蓄されておらず、よく春に出芽するお茶の品質は自然と低下します。これが何を意味しているかというと、2006-2007年は猛烈なプーアルブームが雲南省を直撃しました。農家では作ったお茶は片端から高値で売ることが出来ました。このため、従来は、年に1-2回しか茶摘みをしなかったはずが、皆、一年中茶摘みが行われました。このため、2007年、特に2008年のプーアル茶は喉韻が弱いお茶に仕上がっております。
土は赤土が最適です。赤土とは酸化鉄を多く含む土ゆえに赤い色をしております。喉韻の強いお茶を生み出すには鉄分は不可欠です。雲南省は概して赤土の土壌が覆い場所ですが、どの山も赤土で出来ているわけではありません。老版章(布朗山)、无量山などは、赤土が多く鉄分に富んでおります。
无量山周辺の工事現場は赤土で覆われておりました。 | 良いお茶が作られる山には、豊富な赤土があり、非常に高濃度の鉄分が含まれております。 |
気候というと一般論的に聞こえますが、ワインと同じくお茶にも当たり年と余りよくない年があります。プーアル茶は保存が出来るお茶であるため、当たり年の物を多めに買い、在庫するなどのノウハウも必要となります。
基本的に、お茶は成長が遅いほど良い品質になります。つまり、成長するのに、より時間をかけるほど喉韻の強いお茶になると言うことです。
お茶は比較的温かく、乾燥状態の方が良いお茶が出来ます。暖かい=日光が豊富なので、茶葉は香りや味の素となる成分を量産します。但し、乾燥していると、夜の気温は更に低く(放射現象)、また水分不足から成長速度が遅くなります。
逆に、雨が多い年はお茶の品質は最低になります。雨が多いと、お茶はすくすくと伸びてしまいます。成長が早いと味が薄くなり、当然、喉韻も強くなりません。雲南省と言っても非常に広く総面積は38万平方キロと日本よりも広い為、省の気候は一貫しておりません。南部はどちらかというと、アジアの天気の影響を受け、南西・西部になると、大陸性の天気の影響を受けます。このため、お茶に対しての最適な気候は雲南省でも州ごとに異なります。例えば、2010年、西双版納は強烈な干ばつに見舞われ、お茶の生産量は1/3位まで低下しました。このため、お茶の値段は例年よりも値段が高くなりましたが、但し雨が少なかったことが幸いし品質は極めて良いと感じております。但し、更に緯度の高い无量山系のお茶になると、場所によっては干ばつに加え冷害が深刻だった場所もあります。
尚、前述した、ブームなどもお茶の全体品質に影響するので、人的要素として考慮が不可欠です。
喉韻の強度でお茶を選び出し、次段階に香りの確認をします。香りは基本的に品質を決める要素ではなく、お茶の性格を決めます。人による肌・目・髪の毛の色の違いが質ではなく、個性であるのと同じく、香りは個性を形作ります。
プーアル茶のフレーバーを決め込む際には、基本的に消去法で行います。
特に、熟茶の場合、発酵が不適切に行われたお茶が多く、かび臭い香りがするお茶が多く見られます。
プーアル茶はかび臭いから嫌いという話をよく聞きますが、それは、明らかに質の悪いお茶を飲まれた方の感想です。本来、適切に発酵されたプーアル茶はかび臭くありません。また、中には干しイカの香りのするプーアル茶などもあり、これらは一様に不適切な発酵が原因です。
異臭のするお茶は、発酵時に細菌が繁殖や、本来とは異なる種類のカビが繁殖したことを意味しており、味香りの問題だけでなく、健康にも余り良いとはいえません。熟茶の香りは、乾燥した棗や棗椰子(棗と棗椰子は異なる果物です。)のような香りのする物と、乾燥フルーツ系の香りのしないタイプに大別されます。この差は主に発酵の仕方に由来します。
生茶にはやや煙の香りのするお茶があります。
プーアル茶を選ぶ際、煙の香りがないに越したことはありませんが、私達が喉韻の強いプーアル茶を選び出す課程で、多少の煙の匂いは容認する場合があります。勿論、煙臭が強すぎるのは問題です。
多くのプーアル茶マニアやお茶屋では 、「煙臭いお茶は、機械乾燥をしているから、そして、煙の香りのしないお茶は、天日乾燥をしているから」と説明をしているとお客様から聞きます。しかし、実際に現地に行けば、その様な話は事実無根であることが分かります。
雲南省ではプーアル茶の乾燥に機械を使っているところはありません。機械乾燥を行った場合、酵素が完全に失活してしまうため、プーアル茶ではなく、緑茶になってしまいます。このため、大規模なプーアル茶製茶工場であっても乾燥は全て天日により行われます。大規模工場の場合、大変広い場所を天日乾し用の場所として確保しており、管理下にて乾燥作業が行われます。但し、老班章や无量山の老樹をはじめとする高品質なプーアル茶の場合、各農家ベースで生産が行われます。
少数民族を主とする農民の自宅は、昔の日本と同じく、囲炉裏生活が中心となります。勿論ガスや電気調理器などはないため、頻繁に火がたかれます。当然、プーアル茶の生産も家の周辺で行われるため、どうしても煙の香りが茶葉に移ってしまいます。プーアル生茶の場合、数年保管すると煙臭さは徐々に失われ、気にならない程度に変化します。
工場での規模の大きいプーアル生茶の生産風景。工場の場合、管理された施設内で生産が行われるため、煙臭さは全くありません。但し、茶葉は樹齢・山に関係なく全て混ぜてしまうため、良い品質のプーアル茶は入手できません。 | 個人農家によるプーアル生茶の生産風景。炊事は全て薪を燃やした火で行うため、生産したプーアル茶がやや煙り臭くなることがあります。 |
生産が終了した時点で発酵がほぼ完結している熟茶と異なり、生茶は残存する酵素の影響で徐々に発酵が進みます。プーアル熟茶は丁度「腐葉土」や「堆肥」に相当し、生茶は「干し草」や「藁」に相当します。畳もそうですが、最初は緑色ですが、徐々に色も香りも変化します。ハイジのドラマじゃないですが、干し草を数年寝かせておくと甘い香りに変化します。この変化はプーアル生茶の「熟成」に相当します。
プーアル熟茶の場合、生産された年ではなく、茶葉の質と発酵技術の優劣により商品の品質と性格が決まります。
それに対し、プーアル生茶の場合、毎年香りが変化していくために、生産された年は買う人にとって重要な要素です。プーアル生茶の場合、ビンテージ物を追い求めるコレクターやマニアが大勢おり、中には数百グラムのお茶が、数十万円で取引されることも珍しくありません。
実は、味香りの厚み・豊かさは、例え何年保管しようとも変化しません。厚みや豊かさとは、「喉韻」、つまり喉越しを指しております。生茶に関しては、お茶を何年保管したとしても、喉韻の強度は原料となる茶葉の質で決まります。お茶の品質は、摘んだときの茶葉の品質(喉韻)がそのまま踏襲されます。つまり、ビンテージ物のプーアル生茶は、香り、舌の上での感覚が「特別」なだけであり、味の厚み、豊かさに関しては新茶と全く違いがありません。同様の事が日本茶にもいえます。高品質の緑茶を机の上に一年間放置したとします。当然、香りは期待できません。但し、驚くべき事に、「喉韻」に関しては新鮮なお茶と全く変わりません。喉韻はミネラルにより形成されているためです。
実際、上手に保管されたビンテージ物のプーアル生茶は、上手に発酵されたプーアル熟茶に近い味わいとなります。但し、保管には細心の注意が必要です。湿度の高い場所に保管した場合、茶葉は急速に劣化します。長期間保管した結果、かび臭いお茶へと変化してしまいます。
プーアル茶の場合、「紙にくるんだ状態のまま保管する」というのが、一般常識ですが、外気に晒された状態で茶葉を保管した場合、温度の上下に伴う加湿が起こり、茶葉の本質的な品質は低下します。勿論、24時間365日空調管理下にある部屋で保管するならば話は別です。
プーアル茶の最適な保管方法は、しっかりとシールされたアルミ袋などに密封して保管することです。紙に包んだ状態で、長期間室温にて保管した場合、茶葉は徐々に吸湿します。その結果、かび臭いような極めて不快な香りへと変化しますが、それをビンテージ茶の香りと勘違いして拝んでいるコレクターが大勢いるのが実情です。湿度を避けることで、プーアル茶を最適な状態に維持することができます。
一般に、プーアル生茶の場合、1−3年ものは花のような香りがし、3−5年ものはフルーツのような香りへと変化し、更に、蜜のような香りとなり、その後は木質の香りへと変化していきます。私の個人的な意見ですが、一番の飲み頃は10年内ではないかと思います。一般的に、女性や若者は1-7年程度のお茶を好む傾向にあります。
生茶の場合、熟成(発酵)と品質は全く関係がないと説明しましたが、熟茶に関しては例外です。生茶の発酵は、酵素と非酵素的な発酵であり、原料茶葉に含まれているミネラル分が味に影響をします。
これに対し、熟茶はカビの発酵により作られます。つまり、チーズや味噌を造るのと同じ原理です。カビはその性質上、発酵すると有機酸を出します。このため、お茶のpHは必然的に酸性側へと変化します。pHが変化した場合、ミネラルへも大きな影響を与えるため、お茶の味は大きく変化します。つまり、微生物発酵を伴う熟茶に関してのみ、発酵前と後では喉韻の強度が異なります。
プーアル茶というとピザのような形をしたお茶を思い浮かべられる人も少なくないのではないでしょうか。プーアル茶の本来の形は、散茶と呼ばれ、緑茶と同じく、茶葉はバラバラで個々の茶葉が独立した形状をしております。私達が買い付けを行う際も、散茶を見てその品質を確認します。散茶の状態だと、混ぜ物があった場合に比較的容易に判断できます。散茶はその後、緊圧と言って、蒸気処理を行うことで柔らかくし、様々な形へと圧縮されます。プーアル茶が圧縮される理由ですが、その昔、交易品として長距離を運んだために、運搬がしやすいように圧縮されたと考えられております。但し、どのような形に圧縮するかと、それぞれの品質は全く関係ありません。七子餅茶のようにピザ形をしていても、沱茶のようにきのこ形をしていても、形状と品質は関係ありません。小型の、ミニ沱茶については、概して品質が悪いという先入観を抱いている人が多いですが、原料の茶がしっかりとした品質であれば、他の形状のお茶と品質は変わりません。七子餅茶のようなビザ形が一般的なプーアル茶ですが、飲みやすさから考えると、ミニ沱茶はお勧めの形状です。
プーアル茶の本来の形であるプーアル散茶。但しこの状態だと、非常に嵩があり過ぎるため、この状態で流通されることはまれであり、通常は緊圧により様々な形へと「成形」されます。 |
プーアル茶の成形は型さえあれば、様々な形へと成形が可能です。 |
以下、プーアル茶の緊圧の工程をを説明します。基本的に、散茶に蒸気をあてて柔らかくし、それを布の袋に入れて一気に成形を行います。全行程は1分以内に行われ、極めて手際よく作業が進められてゆきます。 以下の写真は大きな工場にて撮影しました。小規模な工場や農家でも類似のプロセスでプーアル茶の成形が行われます。
1.プーアル散茶を計量します。 |
2.計量した茶葉を金属製の型の中へ入れます。 |
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3.下から水蒸気を与え、茶葉を蒸し上げます。但し、茶葉がしっとりとすれば良いだけなので、この工程は数秒で終わります。 |
4.柔らかくなった茶葉を型ごと布の袋に入れ、形を維持しつつ絞り、そして縛り上げます。 |
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5.この仮成形は後の緊圧工程に影響するため、一貫した動作で流れるように形が作られます。合計10秒程度で一つのお茶を仕上げてしまいます。 |
6.石で圧力をかけプーアル茶を圧縮します。 |
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7.圧縮されたプーアル茶は未だ湿っているため、そのまま自然乾燥します。この工程ゆえに残存する酵素がより発酵を促進すると思われます。 |
8.プーアル茶の成形は型さえあれば、様々な形へと成形が可能です。写真はプーアル生茶 |
生産が終了した時点で発酵がほぼ完結している熟茶と異なり、生茶は残存する酵素の影響で徐々に発酵が進みます。プーアル熟茶は丁度「腐葉土」や「堆肥」に相当し、生茶は「干し草」や「藁」に相当します。畳もそうですが、最初は緑色ですが、徐々に色も香りも変化します。ハイジのドラマじゃないですが、干し草を数年寝かせておくと甘い香りに変化します。この変化はプーアル生茶の「熟成」に相当します。
プーアル熟茶の場合、生産された年ではなく、茶葉の質と発酵技術の優劣により商品の品質と性格が決まります。
それに対し、プーアル生茶の場合、毎年香りが変化していくために、生産された年は買う人にとって重要な要素です。プーアル生茶の場合、ビンテージ物を追い求めるコレクターやマニアが大勢おり、中には数百グラムのお茶が、数十万円で取引されることも珍しくありません。
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