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老木から作られたプーアル茶の品質を比較
- [2014.09.09] Written By 北城 彰(Akira Hojo)
ここ数年で中国のプーアル茶マニアの間では「老木」から作られたプーアル茶がブームになっております。老木とは何かというと、樹齢が古いお茶の木から収穫されたお茶を指します。一般的には樹齢100-1000年位の老木をさします。
ただし、茶葉を見て、そのお茶が本当に老木から作られたかどうか見分けるは現実的にほぼ困難です。私のようにプーアル茶に本格的にかかわっていても、老木を見分けるのはほぼ無理と断言できます。
中国では猫も杓子も老樹茶
雲南省へ行くと、ありとあらゆるお茶が老木の名と共に販売されており、空港にある茶屋でさえ並んでいるお茶の殆どに、「老木」「古樹」などの印刷が入っております。老木から作られてないお茶を探す方が困難な状況です。もちろん、現実はその逆で、ほとんどのお茶が老木からは作られておりません。老木どころか、大量生産方式の茶園産のお茶が雲南省のお茶の大半を占めているのが現実です。多くのプーアル茶マニアは自分が高いお金を出して買ったお茶は老樹茶に違いないと強く信じておりますが、確認の方法がないだけに、実際には多くが「裸の王様」状態であると言えます。
老木=葉脈が太いというのは迷信
老木の見分け方のポイントとしてお茶の葉の葉脈が太い=老木という判断基準を実践している人がおりますが、これは迷信です。植物は肥料を与えると生長しようとします。その結果、葉が大きく、緑色が濃く、そして葉脈が太くなります。つまり、葉脈が太いお茶=肥料栽培茶であり、葉脈からお茶の木の樹齢の高低は判断できません。
老木かどうかは意外に重要ではない。
私にとって、お茶が老木から作られたかどうかは品質を語る上であまり大きな問題ではありません。多くのプーアル茶マニアは、老木ゆえにボディが強いとか、後味(コク)が強いと理解しております。ただ、お茶を理解すればするほどに、後味の強さは樹齢以上にお茶の育て方に強く影響されることが分かりました。自然栽培により無肥料・無農薬で作られたお茶については、成長速度が極めて遅く、1つの木に対して極めて少量の茶葉しか付けないため、樹齢の高低に関係無く、ミネラル含量が多く非常に強いコクのお茶となります。全く同じ条件の自然栽培茶同士であれば、樹齢が高いお茶ほどコクが強くなります。ただ、自然栽培茶のコクの強さがあまりに強いため、その差はあまり大きくは感じられません。
老木になればなるほど香りは弱くなる
見た目で判断しにくい老木と若い木の違いですが、その差は時に香りに反映されることがあります。特に作りたてのお茶の香りが、老木と若い木では異なる事があります。若い木から作られたお茶ほど柑橘系や花のような香りが出やすく、逆に老木になると香りがニュートラルになり、香りにおける個性はあまり感じられなくなります。この傾向は必ずしも全てのお茶に当てはまるわけではありません。樹齢が若くても、香りが強く感じられないお茶もあります。ただし、その逆、老木で香りの強いお茶と言うのはあまり見かけません。
若い木は香りが強く個性がはっきり
若い木が生み出す香りは、柑橘系、花、若い木の枝の皮をむいたときのような緑の爽やかな香りが一般的です。香りが爽快ゆえに、新茶から1-2年の間に飲むとまるで烏龍茶か緑茶のようで大変飲みやすく人気があります。このようなお茶の場合、寝かせても問題ありませんが、むしろ若い内に飲んだ方が個性がしっかりと感じらて私は好きです。因みに、緑茶に使われる原料茶葉は若い樹齢の木が多いのをご存じでしょうか?若い木から作られたお茶は、香りが出やすいため、一般的な緑茶の生産者は香りを維持するために定期的に木を植え替えたりもします。希ですが、老木から作られたお緑茶はプーアル茶と同じく、お茶の個性は弱めとなり、透明感ある自然でニュートラルな香りがします。私は個人的にこのタイプのお茶が好きですが、個性が弱いために、売れ行きが明暗を分けます。人により大絶賛だったり、香りが弱いとコメントされたりとテイスティング能力の個人差により評価が両極端に分かれる傾向があります。老木から作られたお茶は、全体に落ち着いた香りがし、樹齢が上がるに従って香りの個性は減少します。老木から作られたお茶は、むしろ「良質な水」との表現が適切なくらいニュートラルな個性のお茶になります。厳密には僅かにフルーティな香りがしますが、若い木から作られたお茶と比べると香りは全体に落ち着いております。
新茶の時に美味しい若い木のお茶、熟成で頭角を現す老木のお茶
面白い点は、熟成をしようと思った場合、老木は非常に理想的な熟成をします。元々の個性が強くないためか、まるで白いキャンバスに絵を描くが如く、熟成によって生じた香りが際立ちます。数年寝かせると、透明感ある蜂蜜の香りへと変化し、それは杏やナツメのような乾燥フルーツ、そしてサトウキビや黒糖のようなより濃厚なフルーツの香りへと変化します。若い木から作られたお茶ももちろん熟成しますが、熟成の過程で柑橘系の香りは徐々に変化し、全く異なる香りへと変わります。このため、若いお茶の場合「香りの過渡期」があり、どちらかと言うと、新茶から1-2年、その後はむしろしっかりと熟成した5-7年以降が飲み頃となります。(日本での熟成の場合)
若い木から作られたお茶でも、熟成が楽しめますが、飲むタイミングによって香りの印象が随分変わります。ただし、長期間熟成した場合、老木から作られたお茶も、若い木から作られたお茶も同じような香りへと変化します。
私の結論は、樹齢の若いお茶も樹齢の古いお茶もそれぞれの長所があり、どちらのお茶も好きです。最終的にはその時の気分やTPOに合わせて選択すると良いかと思います。ただし、重要なのは樹齢の高低にかかわらず、低肥料もしくは無肥料で栽培されたコクの強いお茶を選び出すことが、新茶で飲むにも熟成させるにも重要な要素となります。
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