お茶のプロが教える白茶の魅力。おすすめの白茶の選び方

[2014.12.26] Written By

白茶の生産工程

緑茶、紅茶、烏龍茶などと並び、白茶と言う種類のお茶があります。白茶は見た目が白いだけではありません。実は加工方法の点で緑茶と根本的に異なります。緑茶は蒸気又は釜炒りにより酵素を不活性化しますが、白茶の場合酵素の不活性化を行いません。白茶の代表的な加工は、非常に長時間にわたる萎凋工程です。この萎凋工程により、成分が分解され、甘い香と味が生成されます。また、同時にポリフェノールをはじめとする刺激性の成分が酸化されることで子供でも飲めるマイルドな口当たりのお茶に仕上がります。なお、緑茶でも、加工法によっては白茶とほぼ変わらない見た目になる事もありますが、見た目が白いだけで白茶と分類することは誤りです。

白茶の香り

白茶は加工中に熱が全くかからないことで、非常に新鮮な香りのお茶です。

白茶には非加熱で作られたお茶と言うことも有り、生きた酵素が含まれております。この為、淹れ方によっては、酵素が活性化し、いれている過程でお茶が発酵します。従って、白茶は淹れ方次第で異なる香りを呈するお茶です。

白茶のもつオリジナルの香りを最大限に楽しみたい場合、水出しがお勧めです。水出しの場合、低温ということもあり、酵素が活性化しません。この為、水出しでいれたお茶は非常に香りが鮮烈で、紫蘇のような爽やかな香りをお楽しみ頂けます。

お湯で淹れる場合、沸騰水で2回(5〜10秒づつ)ほど洗茶をすることで、酵素を失活させることが出来ます。酵素を止めつついれることで、柑橘系のフルーツの香りと花の香りを両方楽しむ事が出来ます。逆に、低めの温度でいれると、酵素が活性化し、花の香りは減少し、紅茶に近いフルーティな香りが形成されます。

白茶は熟成しても面白いお茶です。無酸素の状態で数年以上熟成することで、蜜やフルーツの香りが形成されます。10-20年熟成された白茶はまるでブランデーのような香りを呈します。

意外と知らない白茶の3つの顔

白茶の加工法

以下に白茶と緑茶の加工法を比較してみました。

緑茶

殺青(蒸したり、釜炒りをすることで酵素を失活)→ 揉捻(もむこと) → 乾燥

緑茶の加工

緑茶の揉捻工程

白茶

白茶の加工には「殺青」と「揉捻」がありません。工程だけを見ると白茶は非常にシンプルな製法によって作られます。

萎凋 → 乾燥 →火入れ (火入れはする場合としない場合がある)

白茶の加工

白茶の萎凋工程

福建省における白牡丹の萎凋

白茶の歴史

実は白茶は最も古くから作られているお茶の一つであり、プーアル茶や緑茶よりも歴史が古く、2000年以上前から白茶は生産されていたと記録されております。白茶は中国のお茶農家にとって欠かすことの出来ないお茶でした。茶農家では当然自分たちもお茶を飲みたいものの、栽培農家にはお茶を加工する装置がありません。そこで、収穫したお茶を茶園の脇の日陰に広げ、干すことで白茶の原型となるお茶を作っていたそうです。これらのお茶は、自家用茶として、お茶農家の家族に愛されておりました。雲南省の山奥に住む、山岳少数民族の間では今日に至っても、家庭で白茶が作られております。彼らの生活は、中国における白茶の歴史を映し出しております。現在も雲南省や福建省では白茶が作られておりますが、多くの地域ではプーアル生茶 → 緑茶へと製法がより進化・多様化しました。

雲南省白茶

白茶は萎凋に始まり、萎凋に終わる

白茶の生産工程を見ると、実質、萎凋と乾燥のみです。白茶における萎凋工程ですが、その目的は、茶葉に脱水ストレスを与えることで酵素発酵を促進します。茶葉が水分を失って萎れることで、細胞膜がダメージを受けます。その結果、酵素と各種成分が反応し、酵素的に酸化することで花のような甘い香りが生成します。この甘い香りを引き出すためには、徐々に水分を落とすことが重要です。白茶の加工においては、萎凋を行う環境の湿度と風量、温度を厳密に管理する必要があり、一見シンプルに見える工程ですが、繊細な管理技術が求められます。よく見られる失敗としては、急速に水分を減少した場合、発酵を経ることなく茶葉が乾燥してしまいます。この場合、青臭さが際立つお茶になります。また、萎凋を長くやり過ぎた場合、茶葉が褐色化しすぎることから、香りに蒸れ臭が混じり好ましくありません。

原料の質が極めて重要

白茶の場合、加工がシンプルゆえに、茶葉の原料品質が非常に重要になります。2番茶や3番茶から作られたお茶、肥料を大量に与えて作られたお茶を原料に白茶を作った場合、香りの点、味の点で個性が弱く、初めて飲む人などは何をどう楽しむべきなのか悩んでしまいます。白茶を選ぶ際には慎重に原料茶葉の質を検討することが重要です。例えるなら、春の山菜、例えばタラの芽をイメージしてみてください。山で採れた健康的なタラの芽は、どう調理しても美味しいものです。これは素材の質がよいからであり、素材そのものに自然な甘味が感じられます。調理する際には、素材の良さを生かしたシンプルな料理の方が素材の良さが活きます。白茶もまさに同じ考え方であり、シンプルな加工法のお茶なだけに、良い素材を選び、素材の持つ自然な甘みを楽しむことが白茶の醍醐味です。

白茶

白茶

白牡丹の原料

白茶の加工

白茶が白茶と呼ばれるゆえん

白茶の茶葉は文字通り、白い色をしております。茶葉が白いのは、品種も多少関係しておりますが、品種以上に、加工法が関係しております。日本茶の茶葉も含め、お茶の芽や若い茶葉には産毛が生えております。ただ緑茶の生産時には茶葉を強く揉む(揉捻する)ため、その際に産毛はこぼれ落ちるか、茶葉に押しつけられて目立たなくなります。白茶の場合、蒸したり、炒めたりの殺生工程がない点、更に、茶葉を揉む、揉捻工程がないために産毛がそのままに残り、ゆえに白く見えます。

白毫銀針

シンプルな工程の割に、高い技術力が求められる白茶の加工

白茶の場合、工程がシンプルなだけに、ある意味、質を求めなかったら誰にでも作れるお茶です。摘み取ったお茶を適当に風通しの良い場所に置き、その後、乾燥すれば取りあえず「白茶」と呼べるお茶が完成します。ただし、高品質の白茶を生産しようと思った場合、加工は想像以上に難しく、作り手によって、お茶の質には大きくブレが生じます。白茶の萎凋

芸術的なレベルでの管理が求められる萎凋工程

萎凋は白茶の生産で最も重要なプロセスです。芽は竹の笊の上に広げられます。その後、弱い日光と通気性の確保された部屋の中に静置されます。芽は非常に薄い層にて広げられる必要があり、お互いの芽が過度に重ならないようにすることが大切です。萎凋中は芽を裏返したり、かき混ぜたりはしません。動きを加えることで、非常にデリケートな芽には即傷が付き、それらの部位は酵素発酵により赤変します。
白茶の萎凋

白茶の萎凋

白茶の萎凋

白茶の萎凋

白茶の質を評価する

白茶の質は主に3つの要素により決まります。

  1. 原料の質(肥料の量)
  2. 摘むタイミング:1番茶→2番茶→3番茶
  3. 加工の技術

原料の質

原料の質とは味の濃さを示します。例えば、天然の三つ葉、天然のセリ、天然のキノコと、栽培品を比較すると、味の濃さが異なりますね?また、天然のブリと養殖のブリを比較しても同様の事が言えます。
お茶の場合、肥料を与えれば与えるほど成長が早くなり、収穫量は増えるものの茶葉に含まれるポリフェノール(カテキン)量は減少します。

白茶の萎凋

摘むタイミング

摘むタイミングは値段に顕著に反映します。福建省の場合、1番茶は3月20日過ぎに摘まれますが、4月の上旬になるとお茶の芽は再び成長し2番茶として摘まれます。また、4月の後半になると3番茶が摘まれます。遅い時期に摘まれたお茶でも、白い産毛に包まれており、見た目的には紛れもない白茶です。ただし、同じ白毫銀針同士を比較すると、遅くに摘まれたお茶ほど、芽や葉のサイズが大きくなります。一般に、中国の観光客向けの茶店や海外で流通している白茶の多くは2番摘み以降のお茶が多くみられます。遅くに摘まれたお茶は、渋味があり、また、口にいれた時の滑らかさがありません。あっさりとした口当たりが特徴です。

尚、雲南省の場合、無肥料で標高の高い茶園、樹齢の古いお茶の木ほど品質が高くなります。お茶の場合、品質が高くなるほど成長が遅くなります。雲南省南西部の臨滄では3月下旬からお茶摘みが始まりますが、質の高い、極上のお茶になると、5月に1番茶の収穫時期を迎えます。

白茶の茶摘み

加工の技術

加工の技術ですが、ポイントは2点あります。

  1. 茶葉の変色
  2. 萎凋不良
白茶の萎凋
取り扱いが乱暴だと茶葉が褐変する

茶葉の変色についてですが、農家でのお茶の取り扱いが乱暴だったり、萎凋中に激しく攪拌したり、萎凋時の層が厚すぎて乾燥に時間がかかりすぎると、お茶が褐変します。これは紅茶における発酵と同じですが、白茶の場合、できるだけ均質な色合いが望まれます。
萎凋中に、水分分配が管理できてない場合、萎凋を待たずにパリパリに乾燥してしまう茶葉が生じます。このような場合、白茶本来の甘い香りではなく、刈たての草のような青臭さが感じられます。

白茶の種類

福建省産

白茶と言えば最も一般的な産地は中国の福建省の福州や福鼎などです。白茶生産に用いられる主な品種は福鼎大白茶と政和大白茶の2つです。ただし、福建省における白茶の産地は、歴史的にも非常に有名であり、白毫銀針や白牡丹などの白茶は中国国内はもちろん、海外においても非常に人気があります。その為に、福建省における多くの茶園は、現代農業方式による大量生産にシフトしていることが現状で、味に奥行きがあり、飲み応えのある白茶は非常に稀少になりつつあります。HOJOでは以前は福建省産の白茶を取り扱っておりましたが、より高い品質を求め、現在では雲南省の自然栽培茶を原料に白茶の生産を行っております。

福鼎の市場

中国福建省福鼎のお茶市場:ここでは白茶とジャスミン茶加工用のベース緑茶が主に取引されている。

白毫銀針

白毫銀針

白茶、白牡丹

白牡丹

白牡丹

カゴにいっぱいの白牡丹

雲南省産の白茶

雲南省の少数民族の間ではプーアル茶の黎明期以前から白茶の生産が行われていたこともあり、今でも白茶の生産が行われております。雲南省の白茶は大別すると2種類あります。一つ目は、茶園による大量生産方式で作られたお茶で、市場に流通していルお茶の多くは、味が浅く、コク・余韻の弱いお茶です。このタイプのお茶の多くは、月光(Moon Light)という名称で流通しております。もう一つは、高品質のプーアル生茶にも用いられるような、2000mレベルの標高の高い茶園産の樹齢の古い老木で肥料や農薬を全く使用することなく作られた自然栽培茶を原料とするお茶です。このタイプのお茶は、雲南省の少数民族の手で作られます。飛び抜けて良い原料から作られている点が、特徴で非常に深い余韻と、喉に残る甘味が特徴のお茶です。一般に、雲南省のお茶は生産管理の点では福建省に劣ります。HOJOでは現地に約2ヶ月間滞在することで、原料から生産工程に至るまで細かく生産管理を行い、高いレベルでの白茶生産に取り組んでおります。

雲南省の白茶

雲南省の白茶、古樹銀針

雲南省の白茶、古樹銀針

雲南省の白茶

インドやスリランカの白茶

ダージリンやスリランカでも白茶が極少量生産されております。何れも、高級茶としてプレミアムな価格で販売されております。ただ、インドやスリランカでは白茶を生産する伝統に乏しいことから、萎凋時における水分の再分配テクニック・設備が不足しております。概してダージリン産の白茶を見ると茶葉が萎凋を経ずして乾燥してしまっており、萎凋と言うよりも乾燥茶葉に近い状態に仕上がっております。このため、萎凋による微発酵の甘い香りが殆ど感じられず、代わりに青臭がします。仕上げの火入れを正確に行えば、この青臭さは除かれ、また、舌触りも滑らかなお茶に鳴ります。或いは、数年以上保存することで、熟成を促進するという方法もあります。いずれにせよ、インド・スリランカ産の白茶はやや割高の印象があります。

白茶の効能

白茶は非加熱で作られており、また、微発酵と言うこともあり、含まれている成分の殆どが水溶性です。この為、肝臓への負担が殆ど無く、水分補給に優れたお茶です。子供や外で仕事をする人のように頻繁に水分を必要とする人にお勧めします。

白茶の機能性に感しては様々な研究が見られます。幾つかいかに紹介したいと思います。

白茶はα-グリコシダーゼ(2糖分解酵素)を阻害することで炭水化物からブドウ糖が生成されることを抑制します。このため、白茶を食事中に飲むことで、血糖値の上昇を遅延し、その結果、中性脂肪の合成を抑えることが期待できます。

https://onlinelibrary.wiley.com/doi/pdf/10.1111/j.1745-4514.2007.00165.x

また、お茶の一般的な機能ではありますが、白茶に含まれるポリフェノールには強い抗酸化活性が認められており、DNAなどをはじめとする生体物質の酸化を抑制する効果が期待されております。酸化の抑制効果により、間接的に癌予防、血管の病気への効果が期待できます。

https://core.ac.uk/download/pdf/144768045.pdf

白茶の美容への効果

近年、白茶を原料に用いた美容関連商品を多く目にするようになりました。HOJOでもマレーシアクララルンプールにおいて、大手化粧品会社との白茶コラボイベントに何度か関わっております。

白茶と美容との関連性に関する研究の多くは、飲むと言うよりも、肌に塗ることで日焼けが防止できるという内容です。実際に飲んだときにどの程度効果が有るかは学術的なデータからは未知数です。

肌の質を高く保つための重要な点としては、頻繁に水分を摂取することです。水分をまめに採っていると血液が流動的になり、血液の循環が改善するため、細胞の細部まで酸素が運ばれ、肌のきめ細かさが改善されます。この点、白茶は水溶性の成分を多く含むお茶であることから、頻繁に飲み続けても肝臓への負担が殆ど有りません。また、白茶にはポリフェノールを中心とする抗酸化物質が多量に含まれるため、ただ水を飲むよりも、美容の点ではより高い効果が期待できそうです。

また、白茶の美容に関する興味深い研究に、白茶がコラゲナーゼを阻害してコラーゲンの分解を防ぐ効果があり、カテキンとの相乗効果により非常に優位な効果を示すことが報告されております。

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/19653897/

人気のある白茶

HOJOでは様々な種類の白茶を扱っておりますが、特に人気があるお茶はオーソドックスな3種類です。

古樹銀針

単芽と茎を白茶に加工したお茶です。日本茶の雁が音のように、茎には独特の甘味があります。芽の滑らかな味わいと、茎のふくよかな甘味が楽しめます。

白牡丹

白牡丹は1芽1葉の茶葉から作られております。HOJOでは雲南省の樹齢数百歳の老木から収穫されたお茶を白茶に加工しており、花や柑橘系の果物を連想するような香りと、滑らかな口当たり、透き通るような長い余韻が特徴です。

古樹白茶

1芽2葉の茶葉から作られます。突出して樹齢の高い木から作られており、強烈に長い余韻と濃い後味が特徴です。質が極めて高いお茶ですが、1芽2葉の茶葉から作られることもあり、茶摘み効率が良いため、手頃な値段なのも人気の理由です。

白茶の飲み方

白茶の飲み方は特にこれと言った決まりはありません。極論を言うと、質が高ければ高いほど、いれかたは適当でも美味しくはいるものです。逆に、2-3番茶から作られた白茶の場合、渋見た強いために、湯の温度を低くするなど、慎重ないれかたをしなければ成りません。私が販売しているような1番茶の白茶の場合、3gを200mlに入れ沸騰水で20-30秒ほどいれる方法が簡便です。2煎目以降は数秒内で大丈夫です。白茶のもう一つのいれかたは、水出しです。水出しにする場合、5gを1リットルの水に入れ、冷蔵庫などで数時間静置してください。水出しでお茶をいれたばあい、熱によるダメージを受けないため、そのまま冷蔵庫にいれておけば数日間飲み続けることができます。白茶はデリケートな香りのお茶ゆえに、ローズや他のお茶とブレンドして飲むのもお薦めです。

白茶の長期保存による熟成

白茶はプーアル茶と同じく、保存することで熟成します。実際、プーアル茶・白茶に限らず、保存条件が適切であればあらゆる種類のお茶は熟成が可能です。ただし、中国において、白茶が熟成できるという概念は近年急速に発達した考え方です。熟成をすることで、白茶は蜜、ブドウ、乾燥杏のような甘い香りへと変化します。ただし、熟成をするためには、低湿度、無酸素などの適切な条件下で保存することが重要です。

ビンテージ物の白茶

白茶の熟成
熟成を前提として緊圧された白茶

最後に

繰り返しになりますが、白茶は加工がシンプルなお茶ゆえに、良い質の原料から作られたお茶を選んでください。白茶は素材を重要視し、シンプルな加工で作られるという点では日本食に通じるお茶であり、その為か不思議に日本食にも良く合います。大量生産方式で作られた白茶を飲み、白茶を嫌いになる人がおりますが、それは質の良くない刺身を食べて刺身を嫌いになる外国人と同じかもしれません。また、手元にある白茶に満足がいかない場合、3-7年位保存することで熟成を行い、香りの点で個性を高めてから飲むのも良いかと思います。

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