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お茶とタピオカのプロが教える美味しいタピオカドリンクの作り方

[2019.08.22] Written By


私は「お茶の専門店HOJO」を起業する以前は食品メーカーにて技術系の仕事をしておりました。当時私が関わった仕事の1つは、タピオカの生産技術の開発と生産工場の立ち上げでした。

最近タピオカドリンクがブームになっておりますが、折角なので、お茶とタピオカ両方に詳しい私独自の視点で、本場台湾の老舗のタピオカドリンクの現状と、日本で極上の美味しいタピオカドリンクを作る方法を徹底解説したいと思います。

GABAN社のタピオカ生産設備開発の責任者でした。

私は「お茶の専門店HOJO」を2006年に起業する前は、10年間「株式会社GABAN」という香辛料専門メーカーに勤めておりました。

GABAN社はプロ向けの香辛料を専門としており、ラーメン屋などでよく見かける青と銀の缶に入った胡椒がよく知られています。
私は新商品の開発、品質管理・保証、生産部門を経験した後、最終的にはマレーシアペナン州にある生産工場の工場長を経験しました。

近年ではタピオカドリンクブームの到来によりGABAN社のタピオカパールが注目されておりますが、GABAN社のタピオカパールは、私が生産方法及び生産ラインを開発しました。当時私は開発の責任者として、マレーシアにてタピオカパールの生産方法の開発、生産装置の設計、生産工場の立ち上げを行いました。

尚タピオカパールとは、キャッサバという植物を原料とするタピオカ澱粉を造粒(まるめた)した球状の商品です。また、兄弟商品としてカラメルを加えた黒タピオカ(ブラウンタピオカ)などもあります。
台湾のタピオカドリンク専門店の多くは造粒したての生のタピオカパールを煮て使用しているのに対し、GABAN社で扱っているタピオカパールは乾燥しており、固くツルツルしております。タピオカパール生産において、実は固くする技術が非常に難しく、その生産技術を実用化するのに非常に苦労しました。現在日本ではタピオカブームが到来したことで、マレーシアにおけるGABAN社のタピオカ工場は以前に増して忙しく稼働していると思われます。

本場台湾でタピオカドリンクの人気店、老舗を一通り評価

タピオカドリンクは、台湾では20年前から流行っており、東南アジアでは5-6年前からブームとなっております。近年では、定番のスタイルに加え、様々な新スタイルも登場しております。
例年の如く、烏龍茶の仕入れで台湾に1週間ほど滞在したため、台北にある有名店や老舗店でタピオカドリンクを購入し、味、香り、特徴を一通り評価しました。
特に台湾のクチコミサイトなどで常に上位ランクにある、春水堂、喫茶趣、50嵐、更に、黒糖入りタピオカドリンクの老舗の珍煮丹を中心に試しました。

台湾で人気のタピオカドリンク4種類

2019年現在、台湾では一口にタピオカドリンクと言っても数種類のラインアップにより構成されます。

1. 紅茶にミルクとタピオカをブレンドしたタイプ

2. 紅茶の代わりに烏龍茶、プーアル茶、ジャスミン茶等とミルクとタピオカをブレンドしたタイプ

3. 紅茶+ミルク+タピオカに黒糖を混ぜ込んだタイプ

4. 紅茶、烏龍茶、緑茶、プーアル茶等とタピオカをブレンドし、ミルクを含まないたタイプ

美味しいタピオカドリンクのポイントはコク!

タピオカドリンクの美味しさはコクの強さで決まります。コクのあるタピオカドリンクは、ただ甘いだけでなく、飲んだときに体に染みるような心地良い感覚があり、味が濃く感じられます。例えば、果物を食べた際に、甘いだけの果物はあまり感動がありませんが、味の濃い果物は非常に美味しく感じられますよね?まさに、「コク」=「濃さ」で、コクのないタピオカドリンクはただ甘いだけで、引き込まれるような美味しさがありません。尚、コクは「奥行き」「後味」「喉越し」「余韻の長さ」等の言葉と同じ意味です。

台湾のタピオカドリンクは茶葉の質は良くないがコクがあるという不思議

では本場台湾のタピオカドリンクのコクはどうでしょう?

実際、台湾でも人気店のタピオカドリンクはその多くにコクが感じられ、味に濃さが感じられます。
多くの人は台湾のタピオカドリンクに使われている「お茶の品質が特別に違いない!」と思われるのではないでしょうか?

しかしながら、台湾の各店舗でタピオカドリンクに使用している茶葉はその殆どが量産品のインドのアッサム紅茶です。どのブランドも使用している茶葉の質は低く、お茶自体にはコクは殆ど感じられませんでした。尚、台湾は中国茶の輸入はプーアル茶以外禁止されております。したがって、キームンや雲南紅茶がタピオカドリンクに使われていることはまずありません。

にもかかわらず、実際に飲んで見ると、台湾のタピオカドリンクにはコクが感じられるのは何故でしょう?

台湾のタピオカは黒糖入り

その理由は、2つあります。1つは台湾で使用されている「タピオカ自体にコクがあるため」です。

台湾製のタピオカパールの多くは黒砂糖を含んでおり、それゆえに食べると甘い味がします。使用されている黒砂糖はほぼ無肥料に近い状態で栽培されたものが多く、日本で入手出来る黒砂糖よりも遙かに強いコクがあります。タピオカの生産時に混ぜているのか、パールを黒糖シロップに漬け込んでいるのかは分かりませんが、タピオカパール自体に強いコクがあるため、タピオカドリンクを飲んだ際に、飲み物自体にコクがあるような錯覚(疑似体験)をします。

例えば、台湾で人気の、「喫茶趣」、「50嵐」などの店については、茶葉はアッサムの茶葉を使用しており、お茶にはコクが殆どありませんでしたが、タピオカには非常に強いコクを伴う味が感じられました。この為、タピオカとお茶をストローで吸い込むと、お茶自体にもコクがあるように感じられます。

一方、タピオカドリンクのパイオニアであり老舗の「春水堂」は、意外にもタピオカにもお茶にも、コクがありませんでした。ただ、使用しているお茶の保存状態が良いため、香りの鮮度については他店よりも優れていると感じました。

最近はやりの黒糖入りタピオカドリンク

近年、台湾や東南アジアで砂糖の代わりに黒糖シロップを混ぜ込んだタイプのタピオカドリンクが流行っております。紅茶ベースのミルクティの香りに加え、黒糖のコクのある甘く深い香りが癖になります。このタイプのタピオカドリンクを最初に始めたのは「珍煮丹」というブランドです。マレーシアやシンガポールなど、東南アジア諸国は甘い飲物が好まれることもあり、黒糖シロップをブレンドしたタピオカドリンクは近年爆発的に流行っております。このタイプのタピオカドリンクについても、お茶は量産品でコクがないのですが、他店と同様、お茶のコク不足を良質な黒砂糖シロップで補強しておりました。

台湾では砂糖と氷の量が細かくカスタマイズ可能

台湾におけるタピオカドリンクの販売方法で非常に素晴らしいと思ったのは、糖と氷の量をかなり細かくカスタマイズできる点です。店頭で注文する際に、砂糖は100%, 70%, 50%, 30%, 10%, 0%などから選ぶことが出来、氷の量についても指定できます。私は10〜30%が甘すぎず丁度良いと感じました。人によって、健康への意識、甘さの好みが異なるため、砂糖の量が調節できるのは有難いです。

日本で美味しいタピオカドリンクを作る為の課題

前述したとおり、美味しいタピオカドリンクのポイントは兎にも角にも「コク」です。
台湾では黒糖入りのタピオカや黒糖を砂糖の代わりに使うことで、コクを擬似的に高めております。
しかし、日本ではコクがある、黒糖入りのブラウンタピオカパールが入手しにくいため、台湾のように、お茶にコクを求めず、コクはタピオカパール任せという裏技を使えません。
一般に日本で販売されている乾燥ブラウンタピオカパールは、表記を見れば分かるとおり、茶色はカラメルを使用しているのみであり、コクはありません。

したがって、癖になるような美味しいタピオカドリンクを作るには、コクのある質の高いお茶を使用するか、自然栽培物の黒糖を入手し、砂糖の代わりに使用するという2つの方法に絞られます。

日本では容易ではないコクの強い黒糖の入手

日本でも黒糖は入手可能ですが、日本で入手出来る黒糖の原料となるサトウキビは肥料栽培がその殆どで、全体にコクが弱い傾向にあります。肥料を使って栽培すると、成長が早まり、植物を構成する個々の細胞が肥大化するため、成分が薄くなります。
奄美大島をはじめとする沖縄地方で作られているサトウキビの中には、自然栽培に近い物もあり、中にはある程度のコクが期待できる黒糖もあります。ただし、私が色々試した感じでは、台湾で使用されている黒糖のコクは日本の黒糖とはだいぶコクのレベルが異なります。また、私がお茶の仕入で行く、雲南省には雲南省産やミャンマー産の自然栽培のサトウキビから作られた黒糖が普通に販売されており、非常に強いコクが感じられます。もし、諸外国産の良質な黒糖が入手出来る場合、お茶にこだわらなくても比較的美味しいタピオカドリンクを作る事が可能と思います。

コクの強いお茶を使用するのがお勧め!

手軽に美味しいタピオカドリンクを作る為には、コクの強いお茶を使うことが重要です。言い換えるなら、コクの強いお茶を使えば、簡単に美味しいタピオカドリンクが作れます。本場台湾でもタピオカドリンクに使用されているお茶自体にはコクがないため、コクのあるお茶を使ってタピオカドリンクを作った場合、本場台湾以上に美味しいタピオカドリンクを作れるはずです。

コクの強い弱いはお茶の栽培方法で決まります。無肥料、或いは低肥料でお茶を栽培するとお茶がゆっくりと成長し、茶葉を構成する細胞が小さく高密度になるため、成分が濃いお茶になります。また、茶園の標高が高く、お茶の木の樹齢が高いと更にコクの強いお茶が出来ます。お茶にコクを求めた場合、私の経験上、スリランカやインド、アフリカ、インドネシアのお茶はその殆どが除外されます。これらの国では、大規模農業によってお茶が作られているため、有機栽培であっても肥料が多く使われており、お茶のコクは全体に弱い傾向があります。

タピオカドリンクにお勧めの紅茶

コクの強い紅茶ですが、最も理想的なお茶は中国の紅茶です。意外かもしれませんが、中国には無肥料無農薬栽培のお茶がダントツで多く存在します。ただ、一般的にコクが強い=高品質=高級で値段が高いというのが中国でのスタンダードゆえ、キームン紅茶や正山小種などの有名所のお茶の場合、コクの強いお茶は非常に高価な値段がし、コスト面であまりタピオカドリンク向きではありません。HOJOでは台湾の自然栽培茶園産の紅玉紅茶も扱っておりますが、値段が高いお茶ですので、タピオカドリンクにするにはやや勇気がいります。

それに対し、雲南省のお茶はコクが突出して高い上に、値段が比較的安価でありお勧めです。私達は主に、雲南省の僻地で生産されているお茶から紅茶を作っております。雲南省の臨滄という地域は、自然栽培茶が比較的豊富な土地と言うこともあり、驚くほど良質な茶葉をリーズナブルな値段で入手する事が出来ます。
尚、雲南紅茶ならどれでも良いと言うことではなく、大事なのは無肥料で作られている事です。HOJOでは複数の種類の雲南省産紅茶を販売しておりますが、何れも、無肥料、2000m以上の高所、老木から収穫されたお茶ばかりで、非常にコクが強いお茶ばかりです。
これらのコクの強い紅茶はミルクティにすると衝撃的な美味しさが体験できます。お茶の味をより活かすには、少なめのお湯で濃くいれ、それを牛乳で割ると良いでしょう。

尚、中国の紅茶というと、独特の香りがするから嫌いという人がおりますが、これは中国の紅茶だからその様な香りがするわけではありません。実は多くの中国紅茶は、小規模な生産者によって作られている事が多く、それゆえに製茶方法が安定しておりません。私が知る限り、発酵止めが適切に行われておらず、それゆえに茶葉が過発酵となり、蒸れ臭を放っている紅茶、或いは、発酵止めの際に加熱しすぎて茶葉が焦げてしまっている紅茶が全体の8割を占めております。これら両問題ゆえに、中国紅茶は独特の香りがすると思われがちですが、適切に作られた紅茶は香りも味も透明感があり、ミルクティとも非常に相性がよいお茶です。

タピオカドリンクを作るには、以下の紅茶がお勧めです。

高山紫紅茶

https://hojotea.com/item/b47.htm
紫茶という珍しい品種から作られた紅茶です。標高2000-2100mの自然栽培茶から作られており、しっかりとしたコクが感じられます。
紫茶には仄かに柑橘系の独特の香りがあり、ミルクとも相性がよいお茶です。

雲南古樹紅茶杏蜜香

https://hojotea.com/item/b39.htm
HOJOの定番の雲南紅茶です。仄かに杏と蜜、メンソール系の香りが感じられます。

古樹滇紅

https://hojotea.com/item/b49.htm
野生化したお茶の木から作った紅茶を原料にした非常に珍しい紅茶です。に非常に強いコクを感じていただけます。萎凋を短めに行うことで、滑らかで穏やかな香りに仕上がっており、ミルクティにすると上品で飲みやすい味になります。

雲南功夫紅茶

https://hojotea.com/item/b52.htm
周りの自然と一体化したサステナブルな自然栽培茶を原料に萎凋をしっかりと行うことで、ダージリンティを連想するような華やかな香りがします。香りがしっかりとしたミルクティーを作りたい場合にお勧めです。

紅茶だけじゃないタピオカドリンク向けのお茶

台湾では紅茶以外のお茶をベースにしたタピオカドリンクやミルクティも非常に人気があります。
その多くは、焙煎を強く行った烏龍茶やプーアル熟茶にミルクを加えておりますが、中にはジャスミン茶にミルクを加えたタピオカドリンクもありました。
焙煎を強く行った烏龍茶はミルクとの相性が良いため、新しい感覚の美味しさがあります。ただし、全体に使用されている茶葉はコストを抑えた低い品質のものが中心でした。紅茶ベースのミルクティと同じく、お茶自体にはコクはなく、あくまでコクはタピオカパールに使われている黒糖でした。

春水堂などは、ジャスミン茶にミルクを加えたタピオカドリンクを販売しておりました。使用されているジャスミン茶は、お世辞にも良い物ではなく、酸化したジャスミン茶特有の酸臭がしておりました。ただ、ミルクと合わせると、意外にもそれなりの味香りに感じられました。春水堂のタピオカには黒糖が使われていないため、お茶にコクは感じられず、癖になる味と言う感じではありませんでした。
しかし、私としてはジャスミンミルクティーという全く新しい経験に驚きました。「ジャスミンをミルクティに出来るのであれば、ある意味何でもありなんだな」と思いました。

紅茶以外のタピオカドリンクに合うお勧めのお茶

紅茶外のお茶を用いる場合も、コクが非常に重要になります。コクがないお茶で良ければ、正直どんなお茶でも有りでしょうが、それでは本当の意味での美味しいタピオカドリンクは作れません。HOJOの商品ですと、以下のタイプのお茶がコクがあり、尚かつミルクとの相性が良くてお勧めです。

以前、ミルクとの相性についてコラムを書いておりますのでよろしければ参考にしてください。

プーアル茶ミルクティーほか意外に美味しいお茶とミルクの組み合わせ

黒鉄観音

https://hojotea.com/item/o73.htm
このお茶はしっかりと焙煎されているためミルクとの相性が良く、また、手頃な値段帯のわりに、コクがしっかりと感じられるお茶です。フランス人の友人にアイスミルクティにして御馳走したところ、想像以上に感動してくれました。

宇治焙じ茶鷲峰山

https://hojotea.com/item/g34.htm
自然栽培の煎茶から作られた焙じ茶と言うこともあり、しっかりとしたコクが感じられます。ミルクとの相性も良く、黒砂糖などを使って更に個性を高めるとより華やかなお茶になります。

无量山古樹沱茶

https://hojotea.com/item/d14.htm
HOJOでは以前からプーアル熟茶とミルクの相性が良い点を紹介してきました。特に、本銘柄は自然栽培のお茶の芽の部分を中心に作られている事から、味わいが滑らかで、ミルクティにすると想像以上に美味しくなります。
また、最もお勧めするのは、プーアル熟茶と紅茶を半々でブレンドした上で、ミルクティにする方法です。この方法ですと、紅茶の香りと、プーアル熟茶のしっかりとした味わいの相乗効果により、味も香りもどちらも豊に感じられ、非常に素晴らしいミルクティが出来ます。
ブレンドする紅茶としては、上でも紹介した高山紫茶、雲南古樹紅茶杏蜜香、雲南功夫紅茶、古樹滇紅などがお勧めです。

HOJOには既に予め、紅茶とプーアル熟茶をブレンドした宮廷滇紅と言うお茶もあります。

https://hojotea.com/item/d06.htm
自然栽培の紅茶と宮廷グレードのプーアル熟茶のコラボによる新商品

美味しいタピオカドリンクを作るポイントのまとめ

台湾におけるタピオカドリンクの多様化を見ていると、「こうでなければならない」というルールがあるわけではなく、工夫次第で新種のタピオカドリンクの可能性はまだまだありそうです。
ただし、美味しさを実現するために絶対におさえておかねばならないポイントは「コク」です。台湾ではタピオカと黒糖でコクを演出しております。
日本で美味しいタピオカドリンクを作る場合、コクの強いタピオカパールは入手が困難であるため、コクの強い黒糖を入手するか、コクの強いお茶を使用するのが、美味しいタピオカドリンクを作る上での必須条件となります。

尚、タピオカを煮るときはちょっと中心が固いくらいで火を止めるのがコツです。中まで火を通してしまうと、ドリンクにした際に、とろとろになってしまいます。

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