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プーアル茶の品質の勘違い

 

老木に夢中になるプーアル茶マニア

雲南省におけるプーアル茶の産地は、お茶の消費地から離れていることもあり、中国における他の銘茶のようなしっかりとした品質基準が設定されておりません。
雲南省の場合、お茶の値段は品質とあまり比例しておりません。農家の人々は自分の作っているお茶の価値が分からないため、人々が、老班章という地域のお茶が良いと言えば、老班章のお茶は高くなり、老木が良いという噂が流れれば、老木の値段が高くなります。最近の雲南省における傾向はお茶の木の樹齢です。樹齢が古いほど高い値段で売られ、多くの人々は舞妓して老木から採れたお茶を高い値段で買っております。実は、お茶を見たところで老木かどうかは見分けが付かないため、多く人は「老木の名のもと」に高く売られているお茶を、老木と信じて買っております。

樹齢1000年くらいの老木と、地面の肥料

実際にはマイナー要素である樹齢とプーアル茶の品質の関係

しかし、実際、お茶の木の樹齢というのは品質を語る上では非常にマイナーな要素です。
標高、肥料、育て方、剪定の仕方等、他の全ての条件が同じであれば、樹齢は古いにこしたことはありません。
ただし、育て方次第では、樹齢7年くらいのお茶でも、樹齢1000年のお茶の木よりも遙かによい品質になります。
樹齢が古くなると言うことは成長が遅くなり、お茶の葉が時間をかけてゆっくりと成長するという事です。「老木=質が良い」の根拠はそこにあります。
ただし、樹齢が古くなると、高い値段で売れることから、農家では過剰な肥料を与えるようになり、そうなると樹齢1000年の木もすくすくと成長し、コクのないフラットの味のお茶になってしまいます。

 

健康的な土が健康的なお茶を作る

 

地面の下にあるもう一つの生態系

私が雲南省で茶園を視察する際に必ず注目するのは地面の状態です。
地面を見ると、その茶園がどのように管理されているのか大体のことが分かるものです。
肥料を与えている場合、草が綺麗に除去され、土が掘り返されております。

草が完全に除去された地面

自然に生えている木を想像してみてください。
地面の土が露出している状態は普通ではありません。

私達の目に見えているのは、土の上の部分だけですが、実は土の中には巨大な生態系が存在します。
空気中の窒素を取り込む根粒菌、枯れた草を分解して炭素源を作り出す放線菌等の様々な微生物が、それぞれの役割を担っております。

肥料を与えることが更に土の健康を害する

人間の都合だけで地面の草を取ってしまったらどうなるでしょう?
その土には窒素も炭素も入らなくなり、土はどんどん痩せてゆきます。
土が痩せるとお茶の元気もなくなるため、農家では肥料を与えます。
肥料を与えると、窒素が過剰な状態になり、土の中の生態系は大きく変わります。
同時にお茶には多くの窒素が含まれるようになるため、それを好む害虫も増え、それに伴い消毒も必要になります。
「実は全てが繋がっているんだなあ」と最近つくづく思います。

 

黄色の茶園

無肥料で育てられたお茶は、窒素不足で成長が遅くなります。成長が遅くなるため、光合成でエネルギーを作る必要がなくなり、その結果、葉緑素が少なくなり、茶葉が全体に黄色をしております。一見、弱々しそうに見え黄色の茶葉ですが、じっさいはまるで山菜のようにしっかりとしており、葉もゴムのように弾力があります。


雲南省には未だこのような茶園が残っている地域があります。生のお茶を噛むと、味が濃く、胸に吸い込まれるように深い香りがします。
自然栽培のお茶は生産性は低くなりますが、自然の状態で手がかからないため採算の点では一長一短のように思います。

このようなお茶を仕入れられたとき、私は仕事のやりがいを感じます。

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